魔王 2020-11-10 20:05:51 |
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…………あぁ、何度だって行く。この海でもまだ知らない場所でも。俺は、この手を決して離さない。
(海を視線に向けたまま隣から聞こえてきた言葉は確かに喜びの言葉だった。しかしそれは何処か儚げで、繋いでいる手がするりとそのまま抜け落ちてしまいそうな錯覚に陥る。こいつが変わっているのは間違いない、こんな争いとは無縁の世界で王様になりたいなんて言えばそうなるのは必然だ。だがそうやって周りに誰もいないまま突き進んだ先にあの悲しい魔王が生まれている。こいつをあんなふうにさせたくない、一緒に歩んで間違った道を進みそうになればその腕を引けるような、そんな存在でありたい。何より目の前にいる恋人を一人にしようなどとそんなことを思えるはずもない。普段なら自分の本音は目をそらしたまま口にすることが多い、心を相手にぶつけるのが恥ずかしいからだ。だが今は、確かに自分がそばにいることをより確かめて欲しくて握った手に少し力を込めると、こちらに向いていた顔と正面に自らの顔を突き合わせる。変に緊張する心を押さえつけながら、はっきりとした口調で誓いを立て)
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