魔王 2020-11-10 20:05:51 |
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……自分で言うな。___海だな。……また来年もお前とここに来たい。
(得意げな顔には大きなため息をつく他なかった。といっても、この恋人に振り回されるのが悪くないのは紛れもない事実で、つい先程もそんな渦中に身を置いて夢心地に浸っていたところなのだ。出会った当初ならば『そんなわけあるか』と根拠なく一蹴していたところだが、今はため息と小言で反撃にもならない反撃をするしかない。またその頬を潰してやろうかとも思ったがその前に相手が隣に座り直したので手を出すのは止めておいた。隣から海中から上がってきた泡が如くポツリと言葉が呟かれる。その言葉を受け、しばらくこの海というものに神経を集中させた。打ち寄せる波の音とそれに調和する人々の声、その人々と砂浜とを照らす日照り、そして隣から聞こえる相手の声、息遣い。もう昼もすぎて、まもなく日が落ち始めるだろう。そうなるとそろそろこの状況も終わりだ。これからもいろいろなところに一緒に行きたい気持ちとまだこの瞬間を楽しんでいたい気持ちが交差する。それらと折り合いをつけるように、隣にいる相手の手に自分の手を重ねると視線は海へ向けたままそう願いを口にして)
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