魔王 2020-11-10 20:05:51 |
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……こっちにはこんなに人がいるんだな。この香り……焼きそばにするか。かき氷もこの気温に良さそうだな。
(体のふらつきは相手の目をごまかせるものではなかったらしく、背中に手を添えられるとその優しさには感謝するが、こうなったのも相手のせいだろうと幸福やら羞恥やら優越感やらで気持ちがふわふわと浮ついた。浜辺に近づくうちにふらつきはマシになったがその代わりに人が増えてくる。すれ違う人の視線が一瞬恋人の首筋へと移ってすぐ逸らされる。そこにある跡に何を感じ取ったか分からないが、勘のいい奴なら二人の関係が読み取れるだろう。狙い通り人避けとして機能する。それにほくそ笑みはするものの、見えない跡でいえばこちらの方が圧倒的に多いのを思うとむず痒くもなる。こんな考えではいつ顔に何かしらの感情が出てもおかしくない。いつもよりも一層表情筋に力を入れ仏頂面をつくりつう、腹ごしらえのために海の家なるものに近づいた。リゾート調の簡単なコテージでいろいろと料理を売っているようだ。そこからは海からの潮風をもろともせずソースの香ばしい匂いが流れてくる。時刻は昼を少し過ぎて混雑もなく、同時に甘い疲労感が残る体を誘惑するには覿面の効果を持っていて、釣られるように海の家へと足を進めていく。すっかり焼きそばの気分になると、看板に掲げられたメニューを見つめながらオーダーを決めて)
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