浪漫紀行　【〆】

　
ええっ？あ、はーい。
( 置いていかないでよ、と口から出かけたが、準備が遅いのは事実なので言葉にはせず。代わりに漸く見つけた潜水服に、いそいそと着替え。一旦衣類を全て外した後、下着代わりに水着を、その上に手首から足首まで、全身をぴったりと覆う黒い潜水服を着込み、船内で済ませるべき準備は完了。まず拾い上げたのは、どこかの遺跡で手に入れた、頭に被る式の呼吸具。そして足ヒレ、彼用の潜水セット一式を両手で抱えると、小走りで船から降りて。)
ジェフ、待たせてごめ……わあっ、すごーい、ひろーい！
( 降りて見れば、目の前に広がる水面の迫力は、上から見た時よりもさらに大きく。どこまでも続く青に、彼への挨拶も忘れ、思わず歓声を上げ。空からはよく見えた遺跡も、この位置からだと遠くてよく分からない。これから、こんなに広い水中に入るのだ。湧き立つ期待に、瞳をきらきらと輝かせ。景色に夢中で手元が疎かになり、両手いっぱいに抱えた潜水具は不安定に揺れている様子。)