とある妖 2020-04-03 21:48:47 |
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>21 / 透
( ゆらゆらと尻尾を揺らしながら、視線に気付くと首を傾げる。「どうした?」狐なら尻尾が生えているのは当然。それが異質であると思わないゆえに、触れたいという感覚は理解できず。「図鑑?よく知らぬが、我のような姿は載ってないであろ?動物としての狐ならばありうるかと思うが……」図鑑の存在もまた知らず、絵巻物のようなものだろうかと想像を巡らせる。人型でない方が良いのなら変身してみせようか。「そうか、やはりな」温かく柔らかい、ぎゅうと強く力を込めたら壊れてしまいそうな程華奢な体躯。傷付けぬよう気をつけて優しい手つきでそっと撫でてやり。「それで良い。我はどうも説明が苦手でな。わかりにくかったらその都度知らせよ」人間の子どもと接するなどいつぶりか。優しく言葉を投げ掛けるのは専門外というもの。彼は追い付いているだろうかと時折振り返るのは狐なりの気遣いで。「ああ、そうじゃ。すいーつとやらと同義でのう。和菓子を好む子で安心したわ」警戒心は何処へやら。いつの間にやら幼子の口調は母に甘えるが如く柔らかなものに移り変わっている。それでも捻くれ者の狐は嬉しいと口にすることはなく。「頬が?……だとしたら既に我は頬を持っていないな。ほれ、どうだ?」悪ノリに付き合うべく、少ししゃかんで彼の手を自身の頬へと触れさせる。口角が上がり、至極愉快そうな表情を彼へと向けて )
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