隊長 2018-10-24 21:35:56 |
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(相手から静かに紡がれる言葉、それは限りなく相手の本心に近いように感じ、今まで飄々と何事も卒なく躱す男がどこか不安定で小さく見えた。そしてその時たしかに出来るなら自分が相手の虚しさを満たしてやりたい想いが芽生えた。が、それは超えてはいけない一線。自分の立場は勿論だ。それが第一であるが、近付いて失う恐怖がそれを許さなかった。今まで頑なに人を寄せ付けず引いてきた一線を自ら超える訳にはいかない。此処まで相手に引き込まれてしまうのは相手が容疑者でそれで興味が湧くだけ。今考えるべきは相手の心情を汲むことではなく言葉尻を読み容疑を暴くことなのだと思い直せば、相手へと伸ばそうとした手に力をこめて。
まだ自分の中にわだかまる情に一度蓋をしては隠れんぼを開始する。30まで数え終えたところで辺りを見回せば、花壇が並ぶ草むらの影に少年の頭のてっぺんが見えすぐに見つけてしまうも声をかけることはせず見てみぬふりをすれば相手の姿を探す。相手は細身だが長身。隠れるスペースは限られている。立ち止まって少し思案した後、岩山の遊具に近付き穴の中を覗くもそれだけでは奥までは見えず、仕方なしに身を屈めて相手が入った反対方向の穴から奥へ進むと探していた人物がいて。まるで母親を待つ幼い子供を思わせるその雰囲気に沈めたはずの情が再び湧いては、ここで手錠をかけてやれば良いものをそれはせずに相手の細い手首に手を掛け「…見つけた」と一言。それからじっと相手を見て、
探してる間に逃げればいいものを律儀に隠れるなんてな。……何を考えてたんだ。置いてかれた子供みたいな顔をして
(狭いスペースに大の大人が二人集まれば自ずと距離は近くなる。至近距離で相手と目を合わせ身動きが取りづらいながら空いているもう片方の手を伸ばし相手の目尻をそっとなぞる。からかいはなく冷たさは残しつつも相手にかけた中ではもっとも優しさが滲んだ声色だった。
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