隊長 2018-10-24 21:35:56 |
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(地を這うような声色で紡がれる愛の言葉。本来であれば甘いはずのそれは恐ろしいほどまでに心を絡め取り、烈々と、冷やしていく。祭壇の前で誓われる“永遠”も今は別のものに聞こえ、まるで言い聞かすように繰り返される愛の羅列は行き過ぎた執着。しかしある種、何に対してかは分からない。ただ泣いているようだと漠然と感じた。
そして、問いかけへの返答を聞いたとき、予想する殺しの動機とほぼ合致するそれに望んだ答えのはずが心のどこかで当たってほしくなかったと思う自分がいてわずかに視線を落とす。いつもの調子に戻った相手の言葉もあまり耳に入っておらず目を伏せたまま静かに口を開いて
愛と殺しを正当化できたとしても…お前の愛は独りよがりの傲慢だ
(安楽死、心中、嘱託殺人…世の中愛と死は密接に絡み合う。理解はしているつもりでもやはり相手の考えだけは分かりえない。愛するが故に殺したとして愛した者から何か返ってくるのか。しかし考えたところで相手の殺人は証明されたわけでもなく、今この話を続けても意味はない。返答は求めない静かな声で述べては、もう話は終いにしようと相手を捉える姿勢にうつり薄ら笑いを鋭く見据え前触れもなく相手胸倉を掴み身体を壁に叩きつけて抑え込んで。
…その話はお前を縄にかけて詳しく聞かせて貰おうか
(ぐっと肺を圧迫するように胸倉を掴む手に力をこめたそのとき、腰につける通信機器が緊急呼び出し音を響かせた。こんな時にと舌打ちしては相手を見据えたまま通信をオンにして。
『某コンビニにて凶悪犯グループによる強盗事件、犯人はナイフと拳銃を所持しており人質は客と店員を含め4名。死者がすでに2名出ています。至急応援を。』
「…今は手が離せない。他を当たってくれ」
『各部隊も別件で手がまわらない状態で…』
(緊迫した状況が機械の向こう側から伝わりすぐにでも応援に行かねば被害が広がるのは簡単に予想できた。目の前の相手を見過ごすなどこともあってはならないが、あくまで自分の責務は凶悪犯の殲滅。容疑者である相手とどちらを優先すべきかなど考えたくはないが決断しなければならないようで。
男はというと某コンビニがすぐ近くだと分かり恐れをなしたのかはたまた相手の気迫に負けたのか『も、もう良い。お前なんて知るか!』と退散していき。
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