隊長 2018-10-24 21:35:56 |
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…だろうな。お前の場合、愛してくれる人はもう死んでるみたいだが
(またこの顔だ。『知っている奴』の顔。自分が決して受けられなかった愛というものが何か、こいつは知っている。無条件で愛せる、身を預けられる、心の拠り所のような場所。宙をみてその後どこかに目線を動かす相手、その意味は分からないが、誰かを想っている顔だ。おそらく母親だろう。この顔は何度も見たことがある。公園でもスーパーでも、どこか他愛ない歩道でも、よく見かける顔だ。幸せで満たされていて、安心している。それを憎んだりどうして自分はと傷ついたりすることはない、だが羨ましいとは思っていた。あんな顔を浮かべあんな顔を向けられただ談笑するだけで良かったのに、この世はそんな当たり前はいくらでも溢れているのに、自分にはない。いくらかまた感傷的な気分に浸っているとグラスが重なり耳障りの良い音が響く。そこで気持ちの区切りがついた。いつまでもこいつを自由に喋らせるのは不公平だ、そろそろこちらからも仕掛けさせてもらう。奇妙なことに相手を揺さぶるポイントは自分と同じ、母親だ。相手も母親を早くなくしている、先程の様子であれば関係は凄ぶる良好だったと言えよう。父親と兄は今の力関係から言って仲は悪い、となるとこいつが心の拠り所にしていたのは母親だ。そこを突いてやるのがいいだろう)
冷たいこと言うなよ『これからもどうぞよろしく』の乾杯だ。それと俺の料理をまずいって言ったことあるやつはいない。なんせイタリア料理店で教えて貰った作り方だからな。ついでに言うと中華も和食もキッチンに立った経験ある
(我ながらカルボナーラは完璧な仕上がりだ。高級料理店には及ばないがそれでもスーパーで食材を即興に買い揃えたにしては十分だろう。感傷的になりすぎないようにと思ったばかりなのに、相手の『おいしい』という呟きに思わず自然な笑みを浮かべてしまう。誰かに喜んで貰えることは人並みに嬉しいのだ。それを積み重ねてはいけないだけで。 料理が得意なのは必要性に迫られたから、金を稼ぐためには働く必要があり、賄いが出る料理店は金のない自分にはうってつけだった。各所で長く続かなかったのは勝手に惚れられトラブルになるか、こちらが惚れて衝動が爆発しそうになったかのどちらかだが、そこまでこの男に話してやる義理もない。かくして様々な料理、ひいては職種のスキルを身につけたわけだが、それが今となっては詐欺の役に立っているのだから人生は何が起こるか分からない)
(/ごめんなさい、本日はなかなか手が空かずお返事遅くなりました/こちら蹴り可です!)
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