隊長 2018-10-24 21:35:56 |
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(簡単に女性を翻弄できる口も目の前にいるのがいかにも堅物といった相手では通じそうになかった。強い意思や信念なんてものは結構だがそれに巻き込まれてやるほど暇でもない。だが一方でこの堅物で特殊な権限を持つ部隊に所属している男に追い詰められているこの状況に酷く高揚しているのも確かだ。ジリとこちらに近寄る相手にまた少し後退しようとするも、背後にまた違う気配を感じて今の自分の状況を理解する。挟み撃ちか、なんとも効率的で成功率の高い作戦だ)
お前は俺の名前も知らないのに?名前を知らなきゃ顔も曖昧だろ、冤罪で捕まえるのはマズイって──……おいおい、せっかく俺たちにとって記念すべきファーストコンタクトなのに、水を刺すようなこと言うなよ。お前に心配されなくても、俺は明るく、楽しく、生きてる。心配してくれてありがとよっ!!
(我ながら実に苦し紛れな言い訳だ。顔がはっきり思い出せなくとも警察には任意同行という手もあるしここから逃げた時点で怪しい人物として捕らえることも可能なのだから。ジリジリと追い詰められる感覚に自然と口角を上げていると、また相手が母親の話題を持ち出した。さすがに自分の過去は筒抜けのようでまたその哀れみのこもった冷たい顔がかつての母親と重なるも、今度は鼻で笑うに終わった。あの夜の真実、やっと2人で一夜を過ごしたあの日の真相を知るのはこの世でたった一人、自分だけ。相手は愛しい母親をだしに感情をゆさぶろうとしているようだが今回は相手の読み違いだ。なにせあの母親は自分が何をしようと喜んだり悲しんだりしないだろうから。手をヒラヒラと揺らしながらまた1歩後退する、その時に足に力を込めた。もう背後の応援は間近まで迫っているだろう、意表をつける振り返りざまが勝負だ。力を込めた足で思いっきり地面を蹴ると軽やかに体は浮き上がる、そして狭い路地裏の壁に片足をつけると壁蹴りの要領で反動をつけ体を後ろへと捻った。応援の数は2人、だが不意打ちで舞い上がったこちらの姿に呆気にとられている1人を地面に落下する勢いを使って殴りつけのしてしまう。続けざま振り下ろした拳をそのまま引き戻し裏拳でもう1人の応援を牽制すれば逃げ道の完成だ。足についた勢いそのまま相手に背を向けて逃走を始めたのだった)
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