執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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>レナード
(今まで生きてきてこんなにも死を覚悟したことなど無い。だからこそ余計に恐怖は募る。求められた謝罪に応えたものの彼がすぐに手を離してくれることはなく、引き寄せられるがままに耳元で吹き掛けられた言葉は相も変わらず圧の強いもので。やはり彼はバケモノとして申し分無いほどに冷酷。自身が初めに出会ったヴァンパイアのあの優しさというのは本当に稀なものであった。それを痛感している内に首を圧迫していた手が解かれると、一気に入り込んできた空気に噎せ返り。彼女は来ない。…その一言は元々自分の不安定だった精神をぐらりと傾けさせるには十分で。此方が望めば彼も来ない。確かに今の行動を受ければそうして貰える方がよっぽど平穏なのだろう。そう思うのだが「……いいえ。貴方は、これからも此処に来て。独りでいるよりは…マシだもの」荒い呼吸を整えようとしながら、彼に視線を向ける。彼女がこの部屋に訪れず、彼が此処に現れるまでの間、恐ろしいほどの孤独に苛まれた。いつの間にか連れて来られてしまった得体の知れない屋敷。そこにたった一人、気を紛らわす術もなく部屋の中で考えだけをひたすらに巡らせているのは想像よりも辛いものだった。いくら彼が非道な行いをしたとはいえ、それは自分が歯向かってしまった結果。彼が部屋に訪れることよりも自分の中では孤独でいる時間の方が幾分も怖くて)
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