お坊ちゃん 2018-09-27 22:54:34 |
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そう、だったのですね。
( 質問を咎められなかったことに安心して少し肩の力を抜く。本家や分家、相続権、どれも自分にとっては遠い場所の話のように思えて、彼の説明も全てを理解できたかと聞かれれば否と答えるだろう。それでも何か大きなしがらみ、彼の言う呪いの言葉に纏わりつかれて、色々な要素が重なり合った上で今此処に女性当主として彼が立っているのであろうということは察することができ、何を言っていいのやらと視線を彷徨わせて一言だけ。彼の事情は概ね把握できた。どうして自分を採用するに至ったのかも、秘密の共有者として同じ秘密を持つ者を選ぶのは至極合理的に感じられて。少しばかり微妙な気持ちになってしまうのは女性当主が男性だったと知ってしまったからとはいえ、彼は父や兄達と同じような頭ごなしに女性を軽視する人物には見えない。秘密を既に知られてしまったのも好都合、男性としての振る舞いなど付け焼き刃に過ぎないが、それを気にしなくていい相手が一人居るだけで随分と心持ちも軽い。だからといって気は抜いていられない、ごほんと咳払いを一つ、声色を低めの物に変えて )
__此度の採用、この“美原 清一”謹んでお受け致します。
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