お坊ちゃん 2018-09-27 22:54:34 |
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__何を、一体。
( 空いた口が塞がらないとはこの事。至極愉快そうな彼女の一挙一動に眉を顰め、非難するように静かに声を上げて。遊戯というには些かタチの悪い問い掛けに、体の芯が冷えていくような感覚。彼女から少しでも距離を取ろうと背中をソファに押し付け、はだけた姿を視界に入れないようにと視線を横へ。下手なことを言えば彼女を襲った男性として罰せられてしまい、自らの性を告発すればこの場を切り抜けられるだろうがそれは最後の奥の手。文字通り女であることを捨ててこの場に挑んでいるのだから、女であることがバレるのは何よりの痛手となる。天都橋程の良物件な就職先が見つかるとは思えないが、此処がダメでも男としてやり直すことはいくらでも出来るのだから。だから、この場を凌げるだけの無難な言葉を__紡ごうとは思えなかった。女性の当主と聞いて、自分の理想を押し付けすぎていたのかもしれない。女性でも男性と対等に渡り合う、気高い女性だと買い被っていたのだ。心の中で生まれたこの苛立ちは紛れもなく怒りそのもの。自らの理想を裏切られて一方的に生んだ、どうしようもない感情だった。カッと声を荒げることはなく静かに、冷えた視線と共に少しばかり熱の篭った言葉を送る。それは目上の人間に自分のような田舎者がおいそれと発言できるような整った言葉ではないが、心の底からの言葉。もう此処で雇ってもらえることはないだろうし、不敬として罰せられるかもしれない。けれど先程までの緊張は何処へやら、すっきりとした表情を浮かべてソファを立ち )
……幻滅、いたします。お嬢様が悲鳴を上げれば私が罰せられるでしょうが構いません。こんな阿婆擦れが当主とは天都橋は落魄れたものだと、塀の中から肩を落としましょう。__然し乍ら捕まるのは本意ではありません、お嬢様がお声を上げる前にこの場を失礼させてくださいませ。
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