…Blue Moon

嗚呼、人待たせるの苦手なんで。そうだ、珈琲微糖かﾌﾞﾗｯｸどっちが好きですか？(反射的に出たであろう相手の言葉に相槌を打ちながら季節柄温度の高くなった二本の缶を片手で軽く掲げて見せつつ彼の好みを尋ねる。二本別の味を買ったのは好みが分からなかったというのもあるが、これをきっかけに彼の好みを知る事ができるといった打算的な考えが含まれるものでこれから暫く世話になる分少しでも彼にとって好意的に感じる物を理解しておこうという思惑もあった。ふと掛かる懸念する声を気に留めることもなく いいですよ と軽い調子で返しながら先を促すよう目線を出入口の方へと向ける。行き先を知らない為先に歩みを進めるわけにもと踏みとどまりながら忙しなく聞こえる耳障りな足音や話し声に眉を顰めながら、開かれたままの扉から入ってきた風に乱された髪を適当に整えて再び彼に視線を戻し。)