朝霧組若頭 2018-08-19 16:40:05 |
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そりゃあ光栄だ。躾、なァ…やれるもんならやってみろよ。
(表情が緩めば緩むほどに、柔らかい印象が増していくと共に、何故相手が裏社会の若頭なんかに、という疑問も膨れ上がって来る。ただ、口から出て来る言葉の随所に散りばめられる似つかわない文言は矢張りヤクザとしてのそれ。成る程、父親が言った「面白そうだ」と言う感想が何となく伝わってきた気がする。本来ならば見知らぬ土地でよく知りもしない人物と隣り合う──しかも、隔てたのは襖一枚という部屋に滞在するのは心許無く、許諾する事は無いのだがあくまで相手は自分を"嫁"として迎え入れたのだ。少なくとも傷付けるつもりは無いのだろう、という事が分かれば今はそれで十分だ。小さく頷きつつ、身を乗り出してきた相手が手を取ってきたのを不思議そうに見ていれば、次の瞬間手の甲へと感じたのは柔らかい感触。「手段を選ばない」そんな旨の言葉を言われた矢先の事に体が上手く反応せず、ワンテンポ遅れての反応となってしまった。「…なっ、にすんだよ!ホント油断も隙もねェな。」口付けられた手を相手の元から強引に抜き取るようにして引いた為に、ぐらりと上半身のバランスまでもを崩し空いた片手を畳へとつく際に思ったよりも大きな音を立ててしまった。もし付近に人が居たのであれば、何事かと様子を見に来るであろうが、外からは足音が聞こえてこない為に人払いはしてあるのだろう。机から少し離れた場へと座り直し、何があっても直ぐに反応できるようにと正座を崩し胡座をかいて。次いで出てきた相手の言葉に眉を潜めるのは仕方のない事だろう。何せ数日間は相手の監視の下に生活を送れ、などと言われてしまったのだから。平たく言えば当面の世話焼き、ただしその実は自身の警戒心が解けるまでの監視。正直この広い屋敷の中を案内されただけで覚えられる気はしておらず、当面の間相手について回れる口実が出来るのは嬉しいのだが、何をするにしても監視がつくのは、抗争に発展するような事を考えておらずとも中々に不便だ。かと言ってこの件を断ったとて相手が簡単に引き下がることは無いだろう。チッと軽く舌打ちをしてから大方の事は認める事を告げると共に此方からもいくつか条件を。夜眠る時は部屋の間仕切りである襖を閉めること、自分のやる事にケチをつけないこと。飲み込んで欲しいのはこの二点、ある程度の一人の時間の確保は就寝の際だけでも構わないのだが与えられるのであれば欲しいものだ。鋭さはやや無くなったものの、目付きの悪さからある程度の圧は与えられるはずだが、相手とて若頭。一筋縄ではいかないだろう事は予測済みで。にい、と片方の口角を上げ少し意地の悪い笑みを浮かべつつ)
条件さえ飲んでくれるんだったら、数日部屋に閉じ込めようが何しようが、何も言わねェよ。
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