匿名さん 2018-06-10 21:12:24 |
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成合
( 自然から生まれる音以外はただひたすら静かな空間だった。寮はあれほど騒がしかったというのに、少し離れればこうだ。そのせいで緊張も増すし不安も募るのだからいいことがない。そんな中微かに響いていたのは誰かの足音で、上履き特有の軽い音が更に鼓動を速くさせた。私の待っている人かは分からないのだけど、無意識にタオルをぎゅうと掴む。返すものにシワをつけてしまうようだったけど、今だけはちょっとだけ許してほしかった。やがて音は大きくなり、A組の教室の前で止まる。扉に背を向けているせいで誰かは分からないのにもう確信を持ってしまっていた。来てほしいようでほしくはなかったような、そんな人。 )
爆豪、
( 予想していなかったわけじゃなかった。逃げられてしまうんじゃないかって、最悪の予想。起きてほしくなかったからこそ頭の中から放り出そうとしていた予想がぴしゃりと当たってしまってまた泣きそうだ。届かないであろう小さな声で彼の名を呼び、重い足取りで同じように教室を出る。廊下の先にいる小さな人影は、その背中は間違いなく待っていた人で、嬉しいのか悲しいのか分からなかった。「爆豪!」そう叫んださっきよりは大きな声。「…タオル、返しに来ただけ。ごめんね」近寄るなと言われたのに破ってしまってごめんなさいと、そう言った。 )
上鳴
あー…、んー、別に。どっちもちけーし、何なら今日デートじゃん?
( そういえば試聴したCDと妙な感情…いや嫉妬なんだけど、まあそれで次行くとこのことなんて忘れ去っていた。確かに目的ではあるけど早急に買わなきゃ死ぬって訳でもないし、今日はデートなのだから耳郎の行きたいところを優先していい。なんならあいつはさっき良くない思いをしたわけだし、機嫌を直すってことじゃないけど気くらい使っていいはずだ。にまーと緊張感のない笑顔を浮かべて理由を並べれば、すぐそこまで近付いてきた雑貨屋を示して「もう着いたし」と付け足して。 )
…あ、俺アクセだのネイルだのって全く知らねーからそこらへん勘弁な!
( 雑貨屋には勉強の目的もあったはず。なんか女の子とこういうとこ来てただ見てるだけじゃ今後つまんねー奴とか思われてもおかしくねーし、詳しくなって行くことが大事…だと思う。ぜってーそう。男物は見ることはあっても女物ってチラ見くらいしかしねーし、そう言ってカラフルな店内を見渡し、手近な棚に置いてあったネックレスを手に取った。なんとなく黄色のストーンが目を引いただけだけど、そのまま振り返って耳郎の首に当ててやる。「お、割と似合う」何となくで選んだけど似合うっちゃ似合う。俺センスあんのかもーなんて考えて笑った。 )
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