悪魔 2018-05-21 14:45:41 |
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────ゴーン、ゴーン、ゴーン。
(ピリピリと肌がひりつく、心臓に深く響く鐘の音に耳を傾けるように目を閉じた。初めの頃は鐘の音など不愉快でしかなかった。だが今は違う、愛しい人が奏でるこの音はとても心地よく感じてしまう。目を開ければ愛しい人は笑みを浮かべていた、軽く跳躍してザックの肩へと飛び乗りするりと相手の頬に顔をすり寄せればペロリと目元を舐めた。段々と小さくなっていく鐘の音を聞き届ければ「…貴方に悪魔の加護を、私は貴方の剣であり貴方を守る盾。私はずっと貴方の傍に……。」神の加護ならぬ悪魔の加護、神を信仰するザックにとって有り得ぬものだがこれは、はっきり言ってマーキング近い、他の悪魔にとって上級の悪魔である自身はあまり敵に回したくない存在なのだ、言葉の次にふわりと降り注いだ黒い羽。ひらりひらりと舞うその様子をながめながら満足気にゴロゴロと喉を鳴らした。昼間の姿の自身は元の姿よりも魔力が少し劣ってしまう、だが普段の生活の中では申し分なく街へ行こうと足を向けたがそこでやや違和感を感じぴくりと耳を動かす。「…ザックさん。誓の薔薇は今もってらっしゃいますか?」自身の半身ともいえるその薔薇はザックが持つことによってその役割を果たしている。愛する人の願いを叶えるべく差し出した其れを貴方は受け取ってくれた。誓を立てたあの日を思い出しながら双方の瞳をすっと細め「…すこし厄介な気配があります。其れがなんなのか今はよく分かりませんが万が一の為街へと急ぎましょう。」相手の方から降りてクイッと服の裾を加えるやんわりと相手の足を動かすよう仕向けながらも違和感には細心の注意を払い…気のせいだといいのだが。ザックを心配させぬよう声色はいつも通りのトーンで、あちら側から太陽を隠そうとする黒く分厚い雲、それが何かを表しているのだろうかはやく街へ行こう。まだ覗く陽の光ににゃおと鳴き声を、黒の毛並みに光を反射させながら…貴方の時間は誰にも奪わせやしない。飄々とした表情の中に渦巻く殺意にも似たソレを隠しながら───。)
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