悪魔 2018-05-21 14:45:41 |
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────何度だって言います、…貴方に一目惚れしてしまいました。俺と番になり一生を添い遂げてくれませんか?
(あからさまに困惑の表情をだしている相手は、先程とは打って変わって殺意に似た敵意は何処へ、只先程告げた自身の言葉に混乱している様子だ。構えていた剣をだらりと下ろして掴んでいた手をやや強引に振りほどき逃げる様に後ろへと後退した相手。行き場の無くなった手を、キュ、と握れば空を切るようにしてゆっくりと下げて、ほんのりと残った神父の人間ならではの暖かい体温をじっくり堪能しながら、少し遠くなった相手を名残惜しい感じで、じっと見つめる。見開かれたブルーの瞳が夜の闇と炎の光で、時折キラキラと輝いているそんな絶妙なコントラストをうっとりと眺めながらも、口はペラペラと言葉を紡いでおり「そんなに怖がらないでください。貴方とは、戦う気などもうありませんし、魂を頂こうとも思っていません。契約と言っても貴方の血を少し頂戴するだけですし。…ね?簡単でしょう、」最後の仕上げと言わんばかりに、ニッコリとした表情を貼り付けてじりじりと相手との距離を詰めていく。まるで、悪徳なセールスマンの様な達者な口振りで、契約の算段を進めていく様だ。簡単だと、本人は言い張っているが番になった相手は悪魔である自身と一生死ぬ事の無い命、いわゆる不死身の状態で生きて行かねばならなくなるのだ。大まかな説明で重要なポイントを一切告げずニコニコと愛想のいい笑顔で。ふと気まずそうに逸らされた目を、顔を覗き込む様にして自身へと向かせれば、少しづつ壁際の逃れる場所がない隅の方へと神父を追い込んでいき。「…俺の事がお嫌いですか?、悪魔だから?神は全てにおいて平等なのでしょう。ならばその使いである貴方は、悪魔である俺でも好きになる事は可能な筈です。」流れる様な手付きで相手の片手に握られていた剣を掴めば、自身の背後へと軽々放り投げる。そのまま相手の腰を掴み自身の元へと近づける様に抱き寄せては、バサりと広げられたカラスのような真っ黒の毛並み。夜の夜空を切り取ったかの如く闇に溶け込む色合いの翼は、すぐさま互いを包み込んでしまった。途端に真っ暗になった視界で、夜目の効く自身にはそう問題無いがきっと人間である神父には見えるにも程度があるだろう。そっと相手の耳へと唇を寄せれば、ふっと息を吐くように「…それに貴方の願いを一つだけ叶えて差し上げます。どんな高価な物でも、人々からの称賛でも名誉でも。この大悪魔グレルが貴方の望む欲望を意のままに…。」甘い声で呟くこの言葉は、悪魔がよく人間に使用する「悪魔の囁き」大抵の人間は、この言葉に載せられて自身の欲望の赴くままに願いを告げる。神父と言えども元はと言えば人間なのだ、内に眠る欲望の本心を少し刺激すれば、どうせこちら側へと堕ちてくる。悪戯が成功した子供のようにニヤリと口角を引き上げ腕の中に居る相手の返事を待つこととして。)
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