匿名さん 2018-04-25 09:52:50 |
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(──ある春の1日
その日は朝から冷たい雨が降っていて、季節が1ヶ月も逆行したような寒い日だった
わたしは雨の日がキライだ
施しを受けに街に出ることができないから
今日はしかたなく通りから少し離れた、たくさん葉が茂った大きな木の根本でうずくまるように座っている
ここならあまり雨に濡れずに済む
めったに人は近くを通らないし、時おり側を通っても路上に落ちているゴミのようなわたしに気を留める者など、いない
寒い
ひもじい
この世界にあるのはそのふたつだけだった
人間界に堕とされてどのくらい時が経ったのかは分からない
100年かも知れないし、両手の指で数えられるくらいかも知れない
かつて天使であった時の記憶は徐々に薄れ、わたしは今や単に死んでいないだけのもの、だった
わたしは目を閉じた
眠ると、少なくともその間だけはそのふたつから解放されたから
だけど眠気はなかなか訪れなかった
雨はいつまでもやむ様子は、ない)
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