夜に咲くのは紅き薔薇（〆）

…………あなたが、同族だったら良かったのにね。――いいえ、忘れて頂戴
（　人格者であることをありありと感じられるノアの言葉に、ふっと目を伏せるが、その表情に浮かんでいるのは、憂いではなく安らかな微笑みで。もし、もしもあの時、一人でもいいから、ラヴロッカの味方をしてくれるヴァンパイアがいれば、きっと状況は違っていただろう、と。だが、過去を愁いても仕方がない。伏せた瞳を開いて、忘れるようにと告げて　）

もう……怖いのよ。自分が同じ過ちを繰り返すことが。分かってとは言わないわ。ただここで、静かに朽ちていきたいのよ
（　何とかこちらを説得しようと、声を荒げるノアとは対照的に、ラヴロッカは静かに微笑む。まるで今にも枯れ落ちてしまいそうな花のように儚げに、しっとりと言葉を紡げば、駄々をこねる子供をあやすかのように、ノアの頬を冷たい指先で撫でて　）

ヴァンパイアには心があり、人にも心がある。それを分かっていて人の生き血を啜るなんて、理性をなくした獣と同じ。私にだって、矜持はあるわ。それが、私の出した答えなのよ
（　何故吸血しないのか問われれば、ふぅ、と息を吐いてから、暖炉の火へと視線を移し、ゆっくりと言葉を紡ぎ始める。人は生きるために肉を喰らうが、それは屠殺する相手が言葉を持たぬ獣だから出来ることだ。だが、自分たちヴァンパイアの餌はそうはいかないのだ、と。理由を語り終えれば、「あなたには納得できないかもしれないけれど、」と付け加えて、小首を傾げてふわりと笑って　）


（/大変遅くなり申し訳ございません……！よろしければ、今後ともお相手頂ければ幸いです。）