青年A 2018-03-12 23:09:29 |
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──…、
(誘拐されて助けを呼ばずに居られる人間等居るはずがない。恐らくは相当萎縮させてしまい、そんな気力も奪ってしまったのだろうと推測に推測を重ね、勝手に罪意識の連鎖に陥っており。促されるままゆっくりと上体を起こした時目の当たりにした、自分と同様正座をする姿に面食らい瞠目したのも束の間。頬を包んで直に触れる温かさに息を呑み、暫し虚空で彷徨った視線を彼女へと向けて。華奢な指先から伝わる優しさとは相反する寂寥の滲んだ表情に、我が事のように胸が締め付けられる。暗澹と紡がれる言葉は狭い車内に切なく響き、意味を理解し兼ねて混乱するよりも先に自らの心に張り詰めた琴線に触れ。自分のように爛れ拗れた孤独とはかけ離れているけれど、限りなく近い何か。一瞬だけ彼女の心の奥深くを垣間見た気がし、徐に頬にある両手に手を重ねるようにして離させると、それを軽く握り。初対面でこんな事をするものではないと分かっていても、手を離せば目の前で消えてしまう気がしてならない。親指で薄い手の甲を撫でながら伏し目がちに口を開くと「それで泣いちゃったの?」と先程からの想定の範囲外の言動の理由を問い掛けて)
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