赤の女王 2018-03-10 15:26:34 |
通報 |
マカロン…!
(初めて知ったその名前は成程、摘み上げたそれに何ともぴったりだと一度感慨深げに繰り返し。ふと、頭を過ぎったのは同名の、しかし実態はまるで違う危険物。ラムネやらチョコやら仮の名としてスイーツの名を持つそれらは確か違法ドラッグと呼ばれていたか。それではマカロンと呼ばれていた桃色のタブレット、あれもまたスイーツの名を持っていたことになる。目の前のマカロンよりも、ずっとずっと慣れ親しんだ紫煙の香りに意識は薄暗い路地裏へと飛んでいく。座り込む友人、乱雑に捨て置かれた瓶や缶、漂う酒気と据えた匂い。口の中が段々と乾いていくのは、あの頃への郷愁かそれとも戻ってはいけないという危機感か。兎に角乾きを癒したい一心から舌足らずな調子で「ちょーだい」と無意識に強請ったのは甘いマカロン、ではなく仕舞われようとしている煙草であり。図らずも甘ったるい、と評されたマカロンとは似つかない媚びた甘さを含んだ猫撫で声に、はっと我に返り。乗り出したその身をそれとなく戻しながら愛想笑いで誤魔化して。久しぶりに聞いた自分のその様な声にキツいなぁと内心苦笑いしながら、食べたさ半分誤魔化し半分でマカロンを口に放り。口の中に広がる甘さを堪能すれど、いま求めているのは苦さなのだと相手の動向を気にしながらも遠い意識の中そんな感想を抱き。)
トピック検索 |