2018-03-03 14:30:37 |
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( 漣が長閑に鼓膜を揺らす。心地好さたるや、──生憎記憶は遡れないが──母胎に類似しているのではないかと白痴に程近い脳味噌が応えを出した。学校帰りに六駅先の海辺へ赴けば、革靴と靴下を脱ぎ捨ててスラックスの裾を捲り上げ、浅瀬をひとり散歩する事どれ程の時間が経過したのかは計り知れず。僅かに潤けかけた足指は甲まで、透明な海水に包容されている。三月上旬の春日の昼間。時期的な問題か、平日だからか。いまだ人入りのないこの場所は、物心着いた時からお気に入りの場所だ。絵に描いたような 〝 真っ青な海 〟 ではないが、今や別離してしまった兄との思い出が詰まった唯一無二の個所。潮風に漆黒色の毛先を弄ばれ乍ら、数少ない思い出に耽るように瞠目して。 )
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