カタバミ 2018-03-01 19:09:33 |
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あー……。ちょっと乱暴すぎやしねえかな、お前。
(廊下の壁は車が突っ込んだかのような大きな窪みが形成されており、荒々しい音が去った今も床の瓦礫へ向かってぱらぱらと小さな粒が落ちている。正義のための拳の割には、もはや化け物めいた力じゃないかと自分は独り言のつもりで言ったが、律儀な事にヒーローはわざわざ反応を返してくれた。もっとも「君の方がよっぽど化け物だ」「か弱い子供ばかり攫う犯罪者め」だのと予想通りの言葉ではあるが。悪への怒りに震える男からの感情を対峙するもう一人の男は全て無視し、視線を変えぬまま壁の修理をしなければと、実験器具が壊れてないか心配だなど考え事をしている。現状に不似合いな態度が癪に障ったのだろうか、ヒーローの目は更に吊り上がり本格的に戦闘態勢へ入った。必ず捕まえてみせる、そんな意思が視覚にも皮膚にすらも伝わってくる。けれど、こちらとてそうされる気はない。まだやりたい実験があるのだし、あの子へケーキを作ってあげる約束も果たしていないのだ。それに、もうそろそろいいだろう。)
…エミリー、よく待てました!あとでもっと褒めてやるから、まずはそいつを喋れなくなるまでボコボコにしてくれ。お前はいい子だから出来るよな?
(なるべく明るい声で「GO」の合図を出す。すぐさま無邪気で、少しばかりたどたどしいどこからどう聞いても小さな女の子だと分かる返事が飛んできた。嫌がる事なく素直に従う、元気な声。それにつられて振り向いたヒーローの視界には、もう目の前に獣のような牙が近付いていた。)
【後に悪は、なんて甚だしい勘違いだと嘆いた】
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