カタバミ 2018-03-01 19:09:33 |
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暑い、暑いという呟く独り言にはどうしようもないほどの気怠さが混じっていた。室内にいるため玉のような粒の大きい汗はかいていないが、それでも皮膚や衣服にべたりと張り付く滲んだ汗が止まらない。エアコンのないこの家ではせいぜい、保冷材にうちわだとか扇風機だとかを使わなければ暑さから逃げられない。しかし、外に広がる日差しと気温の恐ろしいこと。どんなに薄着になろうが、カーテンを完全に閉めて影を作っていようがそれだけでは意味がない。さっさとこの鬱陶しさから離れたい、そしてもういい頃合いだろうと思い布団に沈んでいた体を起こす。
向かった先は風呂場。開けっ放しにされた扉の奥にある浴槽を確かめる。並々だが誰も入らない限りは溢れ出さないくらいといった水の量はちょうど良かったので、そこで水道を止めた。その場で腰を回転させ、手首をぶらぶらと揺らしたりなど軽く体を動かす。準備は万全だ。水面を目指して勢いを強くしながら飛び込む。水との衝撃によりバシャン、と大きな音が響いていった。
固く閉じられていた両目を開け、同時にやや丸く縮めてもいた体を伸ばす。コバルトブルーの空に続いて光を反射させて輝く雲は夏の景色そのものだ。相変わらずドラマや映画のワンシーンみたいである。そこに先程まで嫌悪していた暑さはない。代わりに川や海の中へ潜った時のような冷たさと感触が全身に伝わっている。また夕方になるまでここでのんびりと涼んでいよう。浮かんでいたままの足を蹴り始めては泳ぎ出した。
【こんな暑さは耐えられない】
異空間へ繋がるちょっと不思議なお風呂と、それを使って満喫する人。涼しいって万歳。
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