船 2018-02-28 19:12:05 |
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( 彼から投げ掛けられたものにはこくり、と小さく頷き返すだけに留めて。どう考えても不振に思っているのであろうな、そんな考えが浮かぶもののもう遅い。疲れて帰ってきている彼に対して気を使わせてしまっているであろう自分に嫌気が差してくる。抱かかえているクッションへと顔を埋めていれば突然聞こえてきたカチリ、なんていうケトルがお湯を沸かし終えた事を伝える音と彼の声。それに小さく肩を跳ね上がらせた事は見られていないであろうか。ふんわりとした甘く優しい香りが鼻腔を擽るまでそう時間も掛からず、それによって顔を上げそうになる己は相当単純な思考の持ち主。そんな反面、そこで顔を上げ彼の顔を見るなんぞ出来る程に素早い切り替えが出来る訳でも無い。少しだけ沈んだソファの感覚から彼は自分の隣に腰を下ろしたのであろう。それに対して当たりだと告げるように隣から聞こえてくる聞きなれた声とクッションを突く指。不意に顔を上げ彼の方に顔が見えるようにして。先程浮かんだ黒いモヤモヤとした塊は外へと出す事はせず、それでも平素より少し沈んだ表情で彼は何かを察してしまうであろうか。 )……ん、飲む。
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