ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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夜が明け始め、東の空が赤くなった頃、玲奈は目を覚ました。遼子とカレシ、看護師の3人はまだ寝ているが、オトコとみくるの姿がない。
『カレシさんが寝ているってことは、あのオトコも返ってきたはずよね。みくるちゃんもいないし、どこへ行ったのかしら?』
玲奈はカーテンを少し開けて朝焼け空を眺めた。病院周辺の道路に目をやったが、白のレクサスはない。
『悟と茜さんを連れ戻さないと。でもどうやって・・・?』
玲奈はカーテンを閉めてベッドに座った。遼子の寝顔に目を向けようと振り向くと、目に入ったのは遼子が無造作に放り投げた白衣と名札だ。玲奈は遼子の寝顔に向かってこっそり
「先生、ちょっと拝借するわね。」
と言って白衣を着て名札を首から下げ、自宅から乗ってきたポルシェのキーを持って部屋を出た。車を停めてある駐車場に一番近い出入り口は既に確認済だ。礼子は28番通路から建物の外へ出て、ポルシェに乗り、エンジンをかけて、車両ゲートまで乗り付けた。
『これでゲートが開くかしら?』
と思いながらも、名札の裏の医療スタッフ認証用ICカードを取り出した。カードをゲートのセンサーにかざしたが、案の定開かない。代わりにゲートのスピーカーから警備員の声がした。
「おはようございます。ただいま封鎖中ですのでゲートをお開けすることは出来ません。」
玲奈はNICUの看護師並の芝居を打って出た。
「『この先のコンビニで未感染者が閉じ込められている』という通報があったの。迎えに行かないと、ゾンビに食べられてしまうわ!警備員さんには連絡は行っていないの?」
「少々お待ち下さい。」
警備員は申し送り書を確認したが、そんな通報の記録はない。警備員は勘違いした。
「申し訳ございません。交代前の者が確認を怠ったようです。」
「じゃあ早くゲートを開けて!」
玲奈はホっとした。芝居がうまくいったようだ。しかし、
「分かりました。ただ一応念のため、お車の窓を開けてカメラの方を見て下さい。ICカードの写真と先生のお顔をカメラで拝見いたします。」
『ん・・・しまった!』
玲奈は芝居は失敗したかに思えたが、銀座という日本最高単価の客商売の舞台で得た立ち回りでさらなる芝居を打った。玲奈はICカードを取り出し、窓を開けてカメラを見た。
「・・・失礼ですが、西原遼子先生ですか?」
「ええ、そうよ。」
「大変恐縮ですが、別人かとお見受けしますが・・・。」
「警備員さん。”女は医者であっても若く美しくありたいものよ”。」
「こ、こ、これは大変、大変失礼しました。」
警備員には玲奈が、ICカードの写真に写っている遼子が美容整形をうけたものと勘違いした。玲奈は難なくゲートを抜け、ポルシェは病院の外に出た。
『芸能人って大変よねぇ、こんな芝居を毎日やってんだから。』
玲奈はポルシェで大通りを走り抜けた。
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