魔女 2018-02-13 12:58:54 |
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ぇっ…今、何て……
(聞き間違いでなければ、今少年は「一緒に暮らしたい」と言った。せっかく、逃げるための道と猶予を与えたのに少年はどこか誇らしく優しい笑顔でそう言った。一瞬その言葉が理解できなくて思考が停止する。そのような言葉を言われたのは、生まれて初めてだったからだ。こんな化け物みたいな、というよりは実際に“普通の人間”からしたら化け物の存在である自分の側にいたい、と言う人間などいなかった。まだ、魔女がたくさんいた遠い昔は人間は魔女を聖なる使いとして崇めていた、と幼き頃にお母様から聞いたことがある。だが、魔女が数を減らしその力が脅威だと誰かが叫べば魔女という存在は、一瞬にして恐れられ虐げられ、蔑む存在となった。今では自分が最後の生き残りだと、お母様に言われた。そしてお母様が死んで、ずっと孤独に人間への憎しみだけを増やし、時には人間を襲い本当の化け物としての道を歩むのだと思っていた。でも、目の前にいる少年はそんな自分の側にいたいと言ってくれた。きっと、私の過去を知ればまた離れていくのかもしれない、だけど、一つ望みを言って良いのなら「……お前なんて、食べても不味いに決まってる」と相手の裾をきゅっと掴んでどこか照れたような口調で前記を言えばゆっくりと茨は閉じ、館の扉が重たい音をたてて閉じて「ぃ、今さら逃げたいなんていうなよ…そんなことしたらっ食べてやるからな」と意地やけるような、拗ねたような口調で言っては相手の裾から静かに手を離して)
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