リルンの小説~記憶の数々語り~

リルンの小説~記憶の数々語り~

リルン  2018-01-22 22:08:36 
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その名の通りです。
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  • No.2 by リルン  2018-01-22 22:20:15 

ネガティブ思考症シリーズ 第二弾「ネガティブ思考と新たな世界」

 この世界は残酷だ。何回も何回も思ったこと。このようにしか考えられない新たな病。そう、これがネガティブ思考症。貴方達の世界で言えば、「鬱病」に近いだろう。でも、この病はそれよりもっと酷い値になる。ネガティブ思考すると同時に、世界はその思いと同じようになり、思考者をもっとそう思わせる。新たに分かったこと、それは先程も言った〝この世界は残酷だ〟という言葉を言うことで、今の世界が壊れ、新たな世界が作られることだ。何故、そんなに知っているかって? それはかつて私も、ネガティブ思考者だったため――――……

 新たなネガティブ思考者によって、世界は変えられた。目が覚めると、そこは公園。
「   は何処に行ったのだろう……」
私はまた、知るはずもない女性を探す。
「トキ、人探しかい?」
背後から声を掛けられ、振り向くとそこには――――
「……!!」
私の目の前であの言葉を言った人が気味悪い笑みを浮かべ、立っていた。
「そう、僕が新たなネガティブ思考者。……て言っても、ネガティブ思考はあまりしないけどね」
「……どういうこと?」
「正確に言うと、能力を使えるってことだよ。ネガティブ思考症の能力がね」
「え……」
能力が使える……? いや、実際にネガティブ思考症にかかっていないと、使えないのでは……? この人は一体何者なんだ……?
「……僕は能力者。 どんな能力も使える者だよ」
「……。   は何処にいるの?」
私はまたもや、知らない名を呟く。
「トキ、まだその女を探してる訳? 名しか知らぬ女性を」
「……だって、私の名付け親だから」

 私は前の前の世界にいた頃、ネガティブ思考症で隔離病棟にいた。身体と口の自由を奪われ、縛られる毎日。そんな時、一人の看護師と出会う。その女性は異世界から来て、今はある理由でこの世界で見習い看護師として、滞在しているのだと言う。
「ネガティブ思考症……。私の世界で言う、鬱病よね」
そう、彼女は言って私を見た。
「……この世界は――」
「〝残酷だ〟でしょ? 今は言わないで。……貴方をこんな思いにさせる世界は確かに残酷だよ……。でも私はね、この世界はその為だけに作られた訳じゃないと思うの」
彼女はとても前向きだった。異世界から来た彼女ですらも、この世界を残酷だと言ってくれた。私はこの人となら、幸せになれるんじゃないかと思った。
「……私は   。貴方は?」
名を名乗った彼女。でも私には名がなかった。
「……。トキ……なんてどう?」
私は嬉しかった。私を必要としてくれる人がいて、その人に名前を付けてもらえることが。
「今日から貴方はトキだよ」
彼女はキラキラ笑顔を出す。私も彼女みたいに笑えたらいいのに……。

 「彼女の名は分かる。……そう、キラル。でも顔が分からない。前の世界では、自然に彼女だと分かった。でも、貴方に変えられた世界では、何故か顔が出なかった。分かるのは笑った顔と名前だけ……」
私は彼に今までのことを話した。
「なるほどね。それでそこまであの女を。でも、残念。彼女はもうこの世界にいないよ」
「!?」
「彼女は、僕の世界変化によって、自分の世界を壊され、死んだ……」
「!! ……キラル……」
「もう会えないことを悔やむことだな。……これからは僕が君の傍にいるよ」
彼は私に手を伸ばす。だけど私は手を払う。
「……ふざけないで……。やっと……やっと幸せになれると思ったのに……。やっとこの病が治ると思ったのに……!!」
「トキ、まさか――――」
「さよなら。お前なんか消えればいいのに……。どうせお前は消える」
「!! やめ…………ろ……」
「キラルを私から奪ったこと、後悔することよ……。もう私には何も残ってない……から……」
そう言って、私は一人の能力者を消した。

 『彼女は死んだ……』
そう、能力者は告げた。私の精神は壊れかけていた。
「もう……あの言葉言ってもキラルはもう戻ってこない……。……死んだ方が会えるのかな……キラル」
私はこの世界に絶望を感じた。

 この世界は残酷だ。何回も何回も思い続けた。私の病は悪化した。もはやこの世界を信じられなくなっている。あの後、私はもう一度、あの言葉を言ってみた。でもやっぱり何処にもキラルはいなくて……。この世界の存在意味が分からない。先が真っ黒。何も見えない。
「どうせキラルは来る……どうせ来る……」
ネガティブ思考して、祈る私。
……どうか……来て……キラル……
 時間はどんどん過ぎていく。いくら待っても、キラルは来ない。
「……キラル……。貴方は本当に死んじゃったの……?」
それでも待ち続けた。すると、
「……ごめん……トキ……」
声が聞こえた。 懐かしい声……。
「……キラル?」
「……そうだよ、トキ」
私は振り向く。涙いっぱいに溜めた目を思いっきり開く。記憶が思い出されていく――――……。
「トキ……ごめんね。置いて行って……」
なんでこんなに悲しいのだろう。許したい気持ちでいっぱいなのに、私は――
「何で……置いて行った……?」
……こんなにも、怒りがあるのだろう。いや、これは怒りじゃない……。悲しいんだ。辛いんだ。
「……っ。私だって貴方を置いて行きたくなかった……! でも……」
「あの能力者によって、殺された……そうでしょ……?」
「……。ごめんね、トキ……ごめん……」
キラルは泣き崩れた。
「……ごめん、キラル。怒るつもりじゃなかった……」
「分かってるよ……。貴方は一人で、辛かったんだよね……寂しかったんだよね……」
「……うん」
「ごめん……寂しい思いさせて……」
「……もう、何処にも行かない……?」
馬鹿だ。キラルはもう死んでいてこの世界に、長くはいられないのに。傍にいてほしいだなんて……。
「……うん、いるよ。貴方が私のことを忘れない限り、私は貴方の傍にいるよ」
「……キラル……貴方のことは絶対に忘れない……。一生忘れない……!!」
私は泣いた。病になってから初めて泣いた気がした。でも……なんで……こんなにも涙が出るんだろう……。こんなにも……温かい涙。
「……嬉しいよ。貴方にそう言ってもらえて。……ありがとう」
キラルが輝きだす。もういられないらしい。
「……キラル!」
「……トキ?」
「貴方のこと、愛してるから……! ……誰よりも」
「!! ……私も愛してる、トキ。誰よりも貴方を……」
「……うん。ありがとう」
「……さよなら、トキ……」
輝きがさらに増す――――――――……

 目が覚めるとそこは、誰かの部屋。起き上がろうとすると、急に痛みが走る。つい、目を閉じると
「あ、気が付いた?」
声が聞こえた。そっと目を開ける。
「あまり無理しない方がいいよ」
「……え?」
「君、そこの近くで気を失ってたんだよ」
看護してくれた人の言葉を聞き、私ははっと思い出す。キラルが消えゆく中、さらに増す光が眩しすぎて、気を失ったんだ……。でも……もう、キラルはいない。今度こそ、ネガティブ思考して祈っても、来ない……。
「……っ。うぅ……」
私は涙を流した。流し出すと、止まらなかった。どんどん流れる涙……。
「……辛かったんだね……。悲しかったよね……」
看護の人がかける言葉は、あまりにも温かくて……キラルと重なった。
『でも、もう大丈夫。私がいるから……』
なんて優しい言葉……。温かい……。
「……うん」
ありがとう……キラル。

 「落ち着いた?」
そう、看護の人は声を掛ける。
「ありがとうございました。……なんかすみません……」
「いや、いいよ。君も辛い思い、したんでしょ……? きっと大事な人を失ったんだな……って思ったよ……」
「!? ……どう……して……」
「……かつて、私もそうだったからさ。君を見て、昔の私を思い出したよ。私も、ネガティブ思考症だったの。今は違うけどね……」
「……そうだったんですか……」
「……私も大事な人がいたの。私の病など気にせずに、私と仲良くしてくれた。でも……」
「い、いいです。もう分かりますから」
「……うん。……ねぇ、私と友達にならない?」
「え……?」
「君の役に立ちたいの。今度は私が誰かの為に働く番。それできっと……あの人への恩返しになると思うの。それに……君の傍にいたいしね」
私はつい目を見開く。嬉しかった。
「……私も、大事な人への恩返しをしたい。そして、貴方へお礼がしたい。だから……私は、貴方の傍にいる」
「……! ありがとう……えっと……」
「私はトキ。貴方は?」
「私は……アミン。トキ、ありがとう」
「ううん、アミンこそ……。こんな私を救ってくれてありがとう」
「お互い様だよ。それより、トキはこれまで何回、世界を変えてきた?」
「2回ぐらい……。いや、もっとあるかもしれないけど、私、昔の記憶がなくて……」
「……そっか。私は10~11回は世界を変えてるよ……」
「……そんなに……」
「うん。私は5歳の時から、ネガティブ思考症で、能力も十分、使えたの。私の両親が、私を愛してくれる親に変わるまで、世界を変え続けた」
「……アミン……」
「でも、両親は完全には変わることなく死んだ。最後に言ったこと……それは〝本当は愛していた〟という後悔の言葉だった。私はそれを聞いた時、自分は何ということしたのだろうと、自分を責めたよ。そんな時、私はあの人と出会った。そう、大切な人。彼女は私を見つけて、〝そんなに責めないで……。貴方はきっと悪くない〟って言ってくれたの。私は今度こそ、失わないようにしようと思ったんだけど……」
「……誰かの世界変化に、彼女は巻き込まれた……?」
「……! どうしてそれを……?」
「……実は、私の大切な人もそうだった。私の場合は、ある能力者によって……だけど……」
「……そっか……」
アミンはこれ以上、聞いてこなかった。お互い、辛いことを経験してきたのだと、分かったからだ。
「……アミン、どうやってネガティブ思考症を治したの?」
「あぁ、それは分からないんだ……。自分でポジティブに考えようとして、しばらくしたら、いつの間にか治ってたんだ……」
「そんな早くに!! ……でも、私はアミンより強くない。しかも、大切な人は、最近死んじゃったし……」
そう、アミンの大切な人はきっとかなり前に……だろう。でも、私の大切な人……キラルはついさっき、消えていった。そう簡単に明るくなれなかった。

 アミンと会って、数年は経つ。私は未だに、キラルの死を受け入れられなかった。アミンは私に
「最初はそういう物だよ。時間かけてゆっくり落ち着かせたらいいよ」
と言ってくれた。このまま、アミンと過ごせばキラルの死を受け入れていけるのだろうか……。でも、アミンといると、辛さを忘れられることは、事実だ。
「……トキ? どうしたの……?」
と、アミンは心配そうに尋ねた。
「あ、ううん。何でもないよ。ちょっと考え事してただけ……」
「……そっか。あ、そういえば今日は、この世界に来て半年……だったのよね?」
「あ、そういえばそうだったね」
「同じく。私と会った日でもあるけど……」
「そうだね……。あの時は本当、この世界に絶望を感じてたなー……」
「トキにとっては、大切な人を失った日でもあるからね……」
「うん。でも、アミンに会えたから……この悲しみは楽になった。まだ悲しみは残るけど……それでも、もう生きていく理由、見つけたから」
「……強くなったね、トキ」
「へ?」
「あの時のトキとは、大違いの強さだよ。もう、私より強いよ」
「それはないよ……。私はまだまだ弱い。でもいつか、大切な人やアミンみたいに、強くなりたいと思ってるよ」
「……そっか。トキ、これからも、一緒に歩いて行こうね」
「あ……」
私はキラルとの最後の別れの言葉を思い出す。
『……うん、いるよ。貴方が私のことを忘れない限り、私は貴方の傍にいるよ』
キラルの言葉はいつも温かった。アミンの言葉はキラルの言葉と同じくらいに温かくて、私はドキドキしながら精一杯の笑顔で――
「うん」
こう、アミンに告げた――――――……。

―続―

※これは小説家になろうにて、リルンという名で投稿してるものです。
決して奪ったものではないので安心して下さい。あたしのオリジナル小説です。

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