リルンの小説~記憶の数々語り~

リルンの小説~記憶の数々語り~

リルン  2018-01-22 22:08:36 
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その名の通りです。
小説のネタを置いて行くだけのトピです。
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下手な小説ばかりですが……w

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  • No.11 by リルン  2018-01-22 23:40:23 

偽姉

 誰からも愛され、親しまれる姉が羨ましかった。だから。あたしは姉を消し、妹のあたしがこっそり姉を演じてみた。

 家族はあたしを姉として可愛がってくれた。誰もが“あたし„という妹の行方を知ろうとしなかった。それはそうだ。家族が好きなのは姉。つまり長女で、あたしのような妹……次女なんかいらない。大概親は最初に生まれた子が一番可愛くて、愛らしいと思っている。二番目に生まれた子はきっと、邪魔者。あたしがまさしくそうだ。それが今や、あたしが姉となり、皆に愛される。最初はとても嬉しかった。けれど日が経つごとに妹であったあたしの影が薄くなっていっている気がするのだ。あくまで今のあたしは“姉„として愛されている。元のあたしー妹であったあたしーは愛されなかった。さらに本当の姉ーあたしが消したーは、もういない。そう思うと何だか複雑な気持ちになり、少し胸が痛む。
「アキー! ちょっと来てちょーだーい!!」
下から母が呼ぶ。
「今行くー!!」
幸い、あたしと姉は双子の姉妹で、しかも姿も声も背の高さも同じだった。

 いつも無視された。あの頃。懸命に親に見てもらおうと努力するけれど、いつも姉ばかり。そしてあたしには暴力を振るう。酷く殴られて病院に運ばれた時もあった。誰も心配せず、見舞いも誰も来ない。
「……」
静かな病室。心音だけ鳴り響く。するとガラッと扉が開く音。
「アカ……!!」
聞き覚えのある声。
「ごめんね……私のせいでアカが……こんな目に……」
姉だった。唯一、あたしの見舞いに来てくれた人。姉は妹のあたしに最も優しかった。
「私、親が嫌いだよ……」
「……! お姉ちゃん……?」
「アカをこんな目に合わせて……。許せないよ……! 私の大切な……たった一人の妹なのに……!!」
姉はいつもあたしのことを思ってくれた。親の暴力もいつも止めてくれていた。そんな姉だから……きっと、愛されるのだろうと心の中で思った。
「……お姉ちゃんが羨ましいよ……」
「……アカ……?」
「あんなに愛されて……可愛がられて……。友達もいっぱいいるし……。逆にあたしがいなくなった方がいいんだよ……。あたしがいない方が……親もお姉ちゃんも……ストレス溜まらずに済むし……」
姉もきっと、あたしへの同情でいっぱいで、ストレスを溜めているのだと思った。あたしがいなくなれば、親も姉も楽になれるだろうと。すると姉は立ち上がって、
「アカ……そんなこと言わないで。私はアカにストレス溜めたことないよ。アカは私にとって大切だよ……。だから、そんなこと言わないで」
そう言って、あたしを抱き締めてくれた。
「……ありがとう、お姉ちゃん……」
「ううん。今度、私からも親に言うからね? ……それでこのことも止まるといいんだけど……」
姉は必死にうーんうーんと考えてくれた。だけどあたしの心は冷たく、“そんなの無理に決まってるよ„という考えでいっぱいだった。

 あれから2ヶ月。あたしは無事、退院することになり、姉が来てくれた。
「良かったぁ……無事に治ってくれて……」
「お姉ちゃん……! 来てくれたんだ……」
「当たり前でしょ? 大事な妹が退院だよ? これは行かないと!!」
姉はあたしの手を握って言った。だけど、やっぱり姉以外は誰も来なかった。
「……やっぱり来なかったんだ、親」
「私から言ったのにな……。先行っててって言われたから、行かないんだなって分かったよ……」
「別にいいよ。あたしも親に会いたくないし」
また親に暴力振るわれて、病院行きはもうごめんだ。
「御大事になさって下さいね!!」
そう、看護師が言った。
「ありがとうございました」
あたしを看てくれたことに感謝しつつ、病院を後にする。
「……ねぇ、アカ」
「何、お姉ちゃん」
突然話しかけられたことに少し焦りつつ、姉を見る。すると姉もあたしを見た。
「……ずっと考えてたんだけど、私達って、双子じゃない?」
「うん……それがどうしたの……?」
「……それ、利用出来ないかなって」
「……え!?」
「アカが私になって、私がアカになるの。姿も声も背の高さも同じだから、きっとバレないわ」
「で、でも……それじゃあ、お姉ちゃんが暴力受けちゃうよ!? それは駄目だよ……!!」
「……私はどうなってもいいの。それでアカが楽になれるなら、私は何だってする。だから、アカは気にせずなりたかった“姉„になって」
「……お姉ちゃん……!! 嫌だ……。嫌だよ……!! お姉ちゃんがあたしの代わりに苦しむぐらいなら、耐えた方がよっぽどマシ……! あたし、お姉ちゃんにはああなって欲しくない……」
「そう……。分かった、じゃあ……」
姉は鞄かばんからナイフを出す。
「……!? お姉ちゃん……!?」
「これで……私を殺して。本当はアカを殺人犯にしたくなかったけど……こうするしかないの。だから……アカ。私を親だと思って、殺して」
「そ、そんな……出来ないよ……!! お姉ちゃんがいなくなったら……あたし……!!」
「大丈夫。私はずっと貴方の傍にいるから。貴方に見えなくても……ちゃんと傍にいるから……。さぁ、アカ。私を殺して。この未来秋みらいあきを……!」
「……分かった……。お姉ちゃんが……そう望むのなら……!!」
――――ッ!!
少しずつ赤い華が咲いていく。姉はあたしに微笑んだ。
「幸せに……なっ……て……」
崩れ、固く目を閉じる。突き刺さった銀。赤い華。広がる赤。あたしの手から赤い水が落ちる。
「お姉……ちゃん……」
『“姉„になって』
そう、姉が言った気がした。あたしは目を閉じ、そして呟く。
「……此処で死んだのはあたし。あたしは私になる。私は未来秋。此処で死んだのは私の妹。未来明みらいあか……」

 「秋ー? どうしたのー?」
母の呼ぶ声ではっと我に返る。最近、昔のことを思い出してしまうよう。
「……あ、ごめん! すぐ行くね!」
あたしは急いで一階に下りる。
「何ー? お母さん?」
「秋ー! これ、貴方にって届いていたわよ? 何これ?」
「あぁーそれは多分、買った物だよ。ありがとう、お母さん」
あたしは荷物を受け取り、二階へ上がる。嫌な予感した。
「……これ、何なんだろう……」
姉宛だったからまだ良かったものの、もし妹宛だったらと思うと怖くて体が震えた。
「開けないと……何も始まらない……。あたしなら出来る……あたしなら……ファイト、明」
勇気を出して、段ボール箱を開けてみる。
「……ひっ……!!」
そしてあたしは衝撃を受ける。そこには死んだ姉が着ていた服があった。赤く染まり、泥で汚れた服。
「な……何……で……」
よく見ると、紙が挟まっていた。
「え……何……」
そこにはこう書かれていた。
『プレゼント』
「ひゃ……!?」
天罰が下った気がした。あたしはあたしの運命を受け止めるべきだったと。
“貴方は姉のようにはなれない„そう、言われた気がした。

 それから数ヶ月に一回、姉に関わる物が送られるようになった。あたしは引きこもりがちになった。
「秋ー? どうしたの……?」
母はそう言って気遣うが、あたしにとっては余計傷付くことだった。
「……ごめん、一人にして……」
「……そう……。御飯、此処に置いておくからね。食べなさいね」
そう言って、母は一階に下りた。
「……お姉ちゃん……」
あたしはそっと姉に関わる物を見る。姉の服、靴、髪、そして……冷凍保存された首がそこにあった。
「……あたし、やっぱり言うよ……。本当のこと。そして元の生活に戻る。姉を演じるのはもう終わり。お姉ちゃん、ありがとう……。そして、ごめんね……」
姉に話しかける。も、返事はない。姉は目を閉じたまま。もう硬かった。まるでマネキンのように。あたしは決心して、扉を開け、一階へ。
「……話があるの、お母さん」
「どうしたの? 秋」
「……私、秋じゃないの」
「……え? 何を言っているのよ。貴方は未来秋よ」
母は笑う。だけどあたしは真剣だ。あたしの真剣な顔に、母から笑みは消え、焦り出す。
「そんな……違うわよね? 貴方、秋よね? そうだよね……?」
母の反応に心が痛むも、逃げることは出来ない。本当のことを伝えて、元に戻る。それが、あたしに出来る、姉に対しての唯一の償い。
「私は秋じゃない。秋はもう死んだの」
「……えぇ!? 信じられないわ! 私をからかっているの?」
「……信じられないのなら、証拠を見せてあげる。二階に来て」
そう言って、あたしは階段を登ろうとした。すると、母はあたしの腕を掴む。
「よくも騙してくれたわね……。貴方、誰なの!?」
怒りの言葉を聞き、本来の母を思い出す。暴力振るった、あの母。
「私は未来明。貴方が憎む者。秋の妹」
そう名乗って、手を振り払い、二階へ行く。あたしは扉を閉め、姉の首を見つめる。
「これで……元通りだよ……お姉ちゃん」

 しばらくして、バァンと母が二階の扉を開けた。
「来たね、お母さん。入って」
「言われなくても入るわよ! 貴方、今までどういうつもりで――」
「怒るの、早い。先に話聞いて」
そう言って、母を止める。
「何よ、証拠って」
「……これだよ」
母に姉を見せた。
「……!?」
「この首こそ、姉。私は妹の明。今まで私が姉を演じてたの」
「あぁぁ……秋……。 秋……! 秋ーーーーーーーーーー!!」
母は絶叫した。大声で泣いた。姉の首を抱き締め、髪を撫でる。その様子をあたしは静かに見下ろす。少し落ち着いたところで、母はあたしを睨む。
「貴方がしたのね!? 私の大切な……大切な秋を……!!」
「そうだよ……私が姉を殺した。お姉ちゃんみたいになりたかった……」
「あんたね――――」
「でも駄目だった。私はやっぱりお姉ちゃんには敵わない。結局は全部壊れた。私はただの操り人形だったよ。ただ姉の真似をして、姉として愛されただけ。結局、妹のあたしは愛されなかった」
そう、ただ姉を愛しただけ。あたし自身には愛がなかった。ほら、こうして怒って……あたしを睨んで……あたしは邪魔者だと言いたいんでしょ?
「そんなことで秋を……秋を!! 許せない……お前を殺してやる……!!」
「いいよ」
「……は……?」
「あたしはもう生きていても仕方ないもの。姉も死んで、あたしにはもう頼れる存在はいない。しかも、姉はあたしが殺した。姉になりきっていても、いつも心の中に妹のあたしがいた……! あたしは必死に妹のあたしを消した。だけど消えなかった。結局、あたしは姉すらなれなかった。姉でもなく、妹でもないあたしは何だろうね……?」
あたしはそっと母に近付く。
「こ……来ないで!! 人殺し!!」
「あはは……人殺しか……。あたし、本当は人殺しとして生きるべきだったのかもね。そうしていたら、こんなに壊れることなかったのに……」
さらに母に近付く。
「来ないでって言ってるでしょ!? 明!!」
「!!」
今、何て言われた? 明? 明? そう、あたしは未来明。明はあたしの名前。母があたしの名前を呼んだ? そんな馬鹿な。
「……秋になりたかったのね……明」
「!?」
母が急にあたしに向かって、普通の母に戻った。何で? 何で? あたしが嫌いじゃないの?
「貴方も……秋のように愛されたかった……。ただそれだけだよね……?」
「…………」
恐る恐る首を縦に振る。すると、母はあたしをそっと抱き締める。
「……え」
「ごめんね……。愛してあげられなくて……ごめんね……」
「……!!」
あたしは母が頭おかしくなったのかと思った。でも抱き締められて、分かった。母は本当はあたしのことも……。
「!?」
母は驚く。あたしも驚き、恐る恐る離れる。すると、母が刺されていた。
「……!? お母さん……!?」
「私はいい……から……。貴方は逃げなさい!」
「え……!?」
「まだ分からないの……!? 私の後ろの人が……貴方を嫌っていたのよ……!!」
「!?」
母の後ろにいたのは、義理の妹だった。
「……お母さん、喋りすぎ」
そう言って、母の体に深くナイフを突き刺す。
「ぅ……明……早……く……」
そして母は息絶えた。妹はナイフを引き抜き、こちらを見る。
「あぁ……やっと見つけた……。お姉ちゃん? ……いや、未来明」
義理の妹はゆっくりと近付く。
「……ずっと探してたんだよぉ? 貴方のこと。遊んで欲しかったから……」
妹は気味の悪い笑みを浮かべながら、さらに近付く。
「……鈴すず。貴方が……あたしを……?」
「あはははは!! やっと気付いたんだね! 遅すぎて待ちくたびれたよ!!」
「どうして貴方が……?」
「そんなの簡単よ!! 義理の姉が絶望でいっぱいになっている姿を見て、楽しむためよ。おかげで楽しませてもらったわ。フフフ……」
鈴は体勢を低くして、あたしに告げた。
「……**」
「……!!」
あたしはギリギリのとこで避けた。鈴の目は本気だった。
「私を追い込んで、楽しかった?」
「ええ、おかげ様……で!!」
鈴のナイフがあたしの腕をかする。
「うっ……!!」
「あはは、やっと刺さった!! さぁ……貴方も終わりよ」
もう駄目だと目を閉じる。
「……ぐあっ!!」
その声に目を開けると、鈴が血だらけで倒れていた。
「え……何が……起こったの……?」
「貴方も終わり」
――――――!!
「え……?」
あたしの体から次々と流れ出る血。そして、そこにはいるはずのない人物がいた。
「な……なんで……――――……」

 その光景を見下ろす。さっきまで生きてた明と義理の妹、鈴。そして母。目的達成。この家の者は全員死亡した。
「……貴方のおかげだわ、亜希あき」
私はそっと目を閉ざす首の頭を撫でる。
「……姉ごっこは楽しかった? 明」
そう言って、気味悪い笑みを浮かべた。

―Bad end―

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