リルンの小説~記憶の数々語り~

リルンの小説~記憶の数々語り~

リルン  2018-01-22 22:08:36 
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その名の通りです。
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  • No.1 by リルン  2018-01-22 22:15:49 

ネガティブ思考症シリーズ 第一弾「ネガティブ思考症」

この世界は残酷だ。何回も何回も思ったこと。このようにしか、考えられない私。そう、これがネガティブ思考症。貴方達の世界で言えば、「鬱病」に近いだろう。でも、この病は多分それよりも、もっと酷い。ネガティブ思考すると同時に、世界はそれと同じようになり、思考者をもっとそう思わせる……という感じだ。
 そんな訳で今、私は隔離病棟にいる。酷いことだ。口を塞がれ、何も言えないようにされ、身体も紐で縛られ、身動きが取れない。病室は白い所が黒ずんでいて汚かった。看護が来るのは、一年に一回ぐらい。だけど、どの人も私を見ようとしなかった。さっさと仕事を済ませて、そそくさ出ていく。
「……」
何も言えない。病室は物凄く静かだ。
「……っ……」
涙が滲み出てきた。枯れていたはずの涙は、まだまだ出てくるらしい。こういう時は寝るのが一番だ。私は動けないまま、そっと目を閉じる。

 十分寝て、目が覚める。いつもの部屋だった。でも、身体の縛りが無くなっていた。
「!!」
自由に動かせた。さらに、口の塞ぎも消えていた。
「……何がどうなってる……?」
いきなりの不幸からの脱出に戸惑う私。
「……大丈夫……?」
「!?」
私以外の声に振り向く。そこには一人の女性。
「縛られていたからね。さすがに酷すぎるもの」
「…………」
私はじっと女性を見つめる。
「私は此処の看護師なの。……まぁ、見習いだけどね」
「……看護師……」
「そう。……で、新たに私が貴方の担当になったの。でも……まさか、こんなに酷い処置されていたなんて……」
看護師の女性は明らかに悲し気な顔で私を見る。
「……知ってる? 私の病名――――」
「ネガティブ思考症……でしょ?」
「!!」
「私の世界で言うと、鬱病。でもこの世界には、もっと酷い病があるんだね……」
「……貴方は何者?」
「……私は、異世界から来た看護師。この世界のことは詳しいよ」
「……この世界は――」
「〝残酷だ〟でしょ? 今は言わないで。言っていい時は、どうしようもなくなった時。その時に言えば、きっと世界は変わる。貴方をこんな思いにさせるこの世界は確かに残酷だよ……。でも私はね、この世界はその為だけに作られた訳じゃないと思うの」
残酷な状況を作り出すためだけの世界ではない……ということなのか? 私にはよく分からなかった。でも何故か心が楽になった気がした。
「……。私、貴方みたいな人と出会ったの、初めて」
私をこんな気持ちにさせたのは……この女性が初めてだった。今まで家族だった人にも周りの人達にも軽蔑され続けた。だから優しくされるのに慣れていなかった。これが……嬉しいって気持ち。これがきっと安心という感情。するとふと、
「……私はキラル。貴方は?」
名前を聞かれた。そういえば、私に名前なんてあったっけ……。いや、ない。私は名前という存在を知らずに今まで生きてきたから……。
「…………」
「……ん? どうしたの?」
キラルに聞かれ、はっと我に返る。慌てて回答を考える。そして思いついた。
「……私、名前ない。だから、キラル。貴方が私の名前、付けるの」
そう言うと、キラルは目を見開く。
「え……! いいの……? こんな私なんかで……」
コクリ。私は頷く。
「んー……。何がいいかな……」
私の名前を考えるキラル。
「……。 トキ……なんてどう?」
そう提案される。自分に言い聞かせるように呟いてみる。
「……トキ。……私はトキ……」
その様子に、
「え……!? 嫌だった?」
そう言って、キラルは慌てる。
「……いい。トキでいいよ」
そう、私は告げる。
「良かった……。じゃあ、今日から貴方はトキだよ」
キラルはにこっと笑った。私はその笑顔が輝いて見えた。気がした。

 気付くと、朝。もうキラルはいなかった。いつの間に寝てしまったんだろう。でも、キラルは来ない。そう、もう来ないのだ。
「!!」
ネガティブ思考をしてしまった。これでもう本当の本当にキラルは来ない。
「……キラル。短い間だったけど、ありがとう。でも、もう貴方とは会えない。……いい? 言っても。言って、世界は変わるのかな? ……ねぇ、キラル」
独りで呟く。無機質で汚い病室は空しく私の声を響かせる。結局私は、独りなのだ。どうあがいても、この運命は変えられない。……そんな世界はこれっぽちも…………
いらない――――――
「この世界は残酷だ……!!」
変わりゆく世界。意識も遠ざかる。それでも私はキラルの言う、世界変化が起きることを祈った――……

 目が覚めると、そこは部屋。真っ白で何にもない。そこに一人、女性が立っていた。女性は誰かを待っているようだった。
「   !」
私は知るはずもない女性の名前を呼ぶ。振り向いた女性は、前に見たことがあるにこっと笑い、私を見て言った。
「――――――トキ!」
 世界は変わった。別世界に。そこは、ある女性がいた世界。私が前の世界で出会った女性。今度こそ、幸せになれるのかもしれない。ようやく……やっと……。

 …………
………………
「    。トキ――――」
「   ――――――」
『この世界は――残酷だっ!!』
「――――――――」
トキが幸せになったことで、新たなネガティブ思考者。その者によって、世界は再び変えられた――。

―続―

※これは小説家になろうにて、リルンという名で投稿してるものです。
決して奪ったものではないので安心して下さい。あたしのオリジナル小説です。

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