---Abandoné　"Le journal de Mary"

【　いつか、この手紙を見つけるかも知れない誰かへ　】


初めまして、私はメアリ。
あなたがこれを読んでいると言うことは、あなたも私と同じ死にたがり――
それも唯の死にたがりじゃないわ。私からの秘密の手紙を見つけた、ラッキーな死にたがりね。

この手紙は、いつかこれを見つけるかも知れないあなたの為に、私がこっそり書いて隠しておいたの。

あなたがもう知っているのかどうかは分からないのだけれど…
この館の蔵書室には、私が書いていた日記が保管されているわ。
でも、その日記には強力なおまじないが掛けられていて、例えあなたがそれを見つけても、
あなたの知らない情報が書かれたページは読めないようになっているの。館って意地悪ね。

昔の私がそうだったように、きっとあなたも、少しでも多くこの館の事を知りたいんじゃないかしら。
勿論、聞けば教えてくれる人も居るけれど…
面倒臭がられたり、はぐらかされたり…内容によっては、そんな事も少なくないわ。経験上。

そこで、あなたの為に、もうひとつの日記を用意したの。
その日記には、今まで私が集めた情報――あと、此処での暮らしの知恵やなんかを書き残しているわ。
館の住人に見つかったらきっと没収されてしまうから、ある場所に隠しています。

あなたの部屋に置いてあるクローゼットの中、右隅の方に、古い鍵付きの木箱がしまってある筈よ。
日記はその中に隠しているわ。この手紙についている鍵が、木箱の鍵だからね。

色んな事を書いたつもり。きっと、何かの役に立つと思うわ。

さて、長くなってしまったから、そろそろこの手紙も終わりにしようかしら。
今はそうでもなくても、その内、此処での暮らしもそう悪くないと思えるようになるわ。多分ね。

それじゃあ――さようなら、死にたがりさん。


＿＿Mary＿＿