槞 2018-01-03 15:22:23 |
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またまたスペースお借りします
あまり人受けの良いロルではないと思いますが…小説ロルとして見れば大丈夫でしょうか…
(動かない―――何が動かないって、手足が動かない、指先も動かない、首も動かない、瞼さえ開かない。頑張って顔の筋肉に力を入れると確かに眼窩の周りの肉が痙攣のようにひくひくと反応するのだが、それが限界なようで、上瞼と下瞼が離れることはなく、何も見えずに視界は真っ黒のまま。いや、もしくはそもそも光の無い環境に置かれているのかもしれない。明るい光に照らされていれば、いくら目が開かなくても只々暗さしか感じないなんてことはない筈だ。そういえば、今自分がどこに居て、何をしているのか、思い出せない。―――横になっているのだろうか?ゆったりと規則的に膨らんでは縮む肺の活動は把握できるのだが、手足や指先の感覚は無い。顔の皮膚にも、特に感じることはない。温度は若干温かいような気もするが、確か寝ているときや気を失っているときって温度に鈍感になって寒さも感じなくなるって、何処かで聞いたことある気が……嗚呼、どうしてこんな下らない事はいちいち覚えているくせに、自分が今何をしていたかなんて事が記憶からすっぽりと抜けているのだろう。それ自体はよくある事なのだ、例えば何かを取りに書斎へ行くが、部屋に入った頃には何をしに来たか忘れてしまったり。しかし、金縛りにあった状態で、視界も感触も限られたまま、記憶消失というのは怖すぎる。あ、そうだ、音……!手掛かりになるような、音は無いだろうか。自発的に気づかされる程目立った音は聴こえないが、よくよく耳を澄ましてみると時計の音が聴こえる。カチ、カチ、一秒毎に刻まれるその音は妙に聞き覚えがあり―――そう、これは己の部屋の掛け時計の音。そうだ……きっと己は、自室で寝ているだけなのだ。やはり、根拠のない恐怖心など、宛にもならない。心配損というものだ。しかし、それにしても時計の音が徐々に大きくなっているような気が―――?)
―――っ
っは………
(何かの拍子に、蓋を閉じていたゴム紐がパチンと切れたように瞬時に体が命令をきくようになり、不足していた酸素を一気に吸い込もうとする肺の急な動きについていけず、思わず息が詰まる。呼吸の調子を整えて、開くようになった瞼を全開すると、冷静に眼球だけをきょろきょろと動かして懸命に周りの様子を伺う。……自室だ。首まで分厚い羽毛布団にくるまれている。他にも変わったところは特に見当たらない。見当たらないのだが、音が聞こえる。そう、先程の音量が大きすぎる時計の音が。はっとして、飛び上がるように両腕で上半身を支えて起き上がると、カーテンの空きっぱなしになった窓から差し込む月明かりに照らされた掛け時計が見えた。しかし、それはそのあるべく場所にはなく、誰かが無造作に置き捨てて行ったかのように表面を絨毯側に向けてベッドのそばに転がっていたのだ。)
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