槞 2018-01-03 15:22:23 |
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スペースお借りしまッす
(無情にも刻一刻と時間の経過を告げるポケット時計の音に嫌な汗をかき、胸の動悸を静めようとゆっくりと、しかしがっちりと力を入れて左胸ポケットにある時計を、そしてその下にある心臓を右手で抑えて。目を瞑ってふぅっと小さく息を吐くと、落ち着け、落ち着け、そう呪文を唱えるように口の中だけで呟き、汗ばむ手を強く握りしめながら埃っぽい空気を大きく吸い込んで、頭のなかで次の手順を冷静に確認して。魔法陣の形に逆流するように魔力を流し込んで、結界の効力が薄まっている所に解除魔法をかける―――よし、できる、私なら出来る。まぶたを開くと、再び暗くて狭い、キャンドルの光に薄気味悪く照らされた木造の部屋に独り残されてしまった事を実感するが、肺に溜め込んでいた息を口から一気に吐き出し、目の端に入り込んだ一滴の冷たい汗をさっと手の甲で拭い取ると、今なら本当に何でもできそうな気がしてきて。血流を促すように何回か両手を閉じたり開いたりすると、慎重に左手に魔力を流し込み、反対の手の人差し指で扉の施錠に不思議な光の糸を誘導して。)
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