傷口の毒味　［　指名制 ／ NL BL ／ 吸血鬼　］

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あれま、本当だわ。正攻法なやり方じゃ、帰れねーって訳ね。御忠告どうも。飲まず食わずしてりゃ、野垂れ死ぬことはできるってか？そりゃいいねえ。エサに自殺されりゃ、アンタも滑稽だわ（開いた扉から廊下へ顔を出し左右を確認してみても、彼の言葉を証明するように同じような道が延々と続いている。まるで出口のない迷宮。謎解きは得意ではない、口の達者な彼からこれ以上有用な情報を聞き出せるとも思えず、お手上げだと扉から首を引っ込め思考を放棄。憂鬱げに扉へ背中を預けてはみるも、口元には皮肉げな笑みが滲む。エサに拒絶され野垂れ死なれたら、招き入れたホストの身としては面目も立たないのではないか。プライドの高そうな彼ならば尚の事、予定外の事には発狂しそうだとクツクツと笑いが漏れる。苛立ちが滲み出ている彼の口調も、その周囲を取り巻く空気感も心地良い。もっと嫌悪に顔を歪め、さっさと自分など捨て置けは良い。愉悦に仄暗くほくそ笑んでいたからか、反応が遅れた。握られた左手首から、ぞわりと寒気が走る。ひやりと冷たい体温が、己れに彼という存在をリアルに伝える。っ、声にならぬ叫びが漏れて）
───触れるなっ！…さっきから何の断りもなく手出してくるなんて、案外品にかけるのなアンタ。手洗い場、どこヨ？（思わず、といった風に掴まれた手を払いのけ。右手で掴まれていた左手首辺りを摩る。僅かに上がった息を落ち着かせ、今の激昂が嘘だったかの如く、冷めた口調で言葉を続ける。つい無意識に庇ってしまった手、彼に弱点を教えてしまったようで居心地が悪い。チッ、と汚く舌打ちを吐き捨て、ぶっきら棒な口調で手洗い場の場所を尋ね。彼が果たして親切に教えてくれるかどうか、教えてくれなければ無礼にも彼の服に触れられた箇所を摩り付け帳消しとしようか）