主. 2017-12-31 13:58:32 |
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(逃げようとするのは無謀で、己の元で大人しくしているのが得策だということを知らないのだろうか。いや、知らないわけがない。この俺が教えてやっただろう。反抗すればするほど自分の首を締めることになることも、拒否をすればするほど虐めてやりたくなることだって。俺は優しかったのだ。無知な餌に知識を与え、選択を与え、人間にしてやった。立派だと言われるべきをやった。__さて、己に毒を吐かれる理由はあっただろうか。振り返ってひとつひとつを見てみても思い浮かばない。人間が何百かはいるこの館で飢えろという方が無理だけれど、そんなことじゃないのは分かる。己の唾液と血で汚れた肌を視界の端に捉え、込み上げたものは怒りでなく笑いだった。口にした針は毒針に見せかけたおもちゃのようで、怒る気も起きない。)
__吸ってくださいと言わんばかりの格好でそれを言うか。
(しかも吸血で声を上げた口で、だ。何なら見せしめにもう一度吸ってやろうかなんて考えたけれど、吐き出される毒はそこまで嫌いではなくなっていた。侮辱するような言葉の数々は彼女の震え緩和剤にしか聞こえなくなったからだ。「お前」ふと口にしたのは質問の前触れで、こうしてあくまでも他人のような関係性が気に入らなかったからだ。他人から知り合いになるための質問は、彼女には縛り付けのように聞こえてしまうだろうか。「名前は?」彼女でしかなかった人間に個別の名があるのならそれで呼ぶまで。ここで彼女が渋るようでも追い込んで聞き出すだけなのだから、随分やりやすいものだ。)
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