司書 2017-12-30 15:52:29 |
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> 青の本
( 彼は丁寧に礼を述べ、隣に座った。それに対して緩く頭を下げては、唐突に始まる沈黙に僅かな困惑を見せた。横目で見ると何やら一生懸命話題を作ってくれようとしている彼。それは健気で従順で、真面目そのものであった。思わず荒んだ心がゆっくりと溶かされる様な気がする。さて、然程己に取ってはそうキツくもない沈黙の後に捻り出された問いは無難で、何と返せば良いのかは直ぐに分かったものの、此方も返すのには時間を要した。と言うのも、月は好き嫌いの対象では無く、ドチラかと言えば時にはまるで両親やら親しき友人の様に優しく己を励まし、また時には酷く不快な程に己の嫌な部分を照らす。ドチラも兼ね備えた月に対してどのような感情を抱いているのか、僅かに深読みし過ぎている気もするが、結局己は好きだった。
「 月 ___、月は、好きですよ。」
と、隣で首を傾ける彼に緩い笑顔で言う。嘘は付かない、そう、嘘は付かない。自身に誓っては、彼にも 「 貴方は、月は好きですか ? 」なんて問いてみようか。 )
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