⚠ エイヴリング家の父親は、娘たちにお手上げのようです。【人数制限/再建】

［ストーリー］


アメリカのとある小さな街で、ひとりの美しい女に恋をした男がいた。
振られても振られても幾度もアタックし続けて、彼女もとうとう彼を受け入れ、ふたりはめでたくゴールイン。
ささやかだが愛に溢れた、幸せな家庭を築く。

時は流れて、今現在。
男の愛した女はいない。
不慮の事故に遭遇し、10年前にこの世を去った。

男は、今や父親だ。
５人の美しい娘たちを抱える、シングルファザーの父親ニック。
彼はその街で、“イカれた娘狂い”としてちょっとした有名人だ。

何しろ５人の娘たちは、ニックの愛した女の娘。
かつての若い自分のように、娘にベタ惚れする男が現れないはずがない。
だが、どこの馬の骨ともわからぬ輩に、大事な娘をやれるものか。
妻が遺した娘たちは、大切な宝物は、死んでも自分が守り抜く。
かつての自分を棚に上げ、父親ニックはそう決めた。

──そう、“死んでも守る”と決めた。


ある雨の日のことだった。
大学で、撮影現場で、実験室で、中学校で。
ニックの娘たちはそれぞれ、彼の急死を知らされた。
スーパーの駐車場で倒れていたとのことだった。
胸を鋭いナイフでひと突き。だが財布は盗まれていない。多少イカれてはいるものの、怨みを買うほど酷い男ではなかった筈だった。それが何故。

犯人も何もわからぬままにニックの葬儀は終了し、とうとう親無し子となってしまった娘たち。
だが、姉妹をばらばらに引き取るという親戚たちの申し出を、長女と次女が頑として断つ。

「結婚はしたいわ、それが私の夢だもの。それでも──」
「──末の妹が18歳になるまでは、私たちは離れない」

家族を愛する男の意志は、しっかりと受け継がれていた。
かくして、かの有名なエイヴリング家の５人姉妹は、父亡き後も、彼の家で支え合いながら暮らし続けることになる。
しかし、あれだけ異性関係にうるさかった父親が今やいなくなったとあらば、多少の変化は起こるもの。
父親の死は悲しくても、娘たちは年頃だ。今まであまり許されなかった異性との交流を、少しずつ楽しみ始めた。

そう、周囲にいる人々も、ニックに過保護され続けていた娘たちとの交流をようやく始められたのだ。


──だが、父親の娘たちへの執念は末恐ろしい。
愛しの宝物たちを死んでも守ると決めた男は、半年後に復活したのだ。
実体を持たぬ、幽霊として。

「嘘──嘘でしょ。パパ、パパなの！？」
「お義父さん！？ 貴方はたしか、半年前に亡くなった、はずじゃ……」

『ああ確かに死んだも、だが死んでも死にきれんと死に物狂いで戻ってきてみりゃこれはいったいどういうことだこの半年で何があったおい待てお義父さんとはなんだ！？ 娘はやらんぞ！？ ５人とも未来永劫この俺ニコラス・エイヴリングのものだ貴様などには断じて渡さんだれひとり、だれひとりとしてだ！！』


娘を溺愛する男の精神は、死してなお健在だった。


＊＊＊


両親を亡くし、５人姉妹だけで暮らしているエイヴリング家の娘たち。
そんな彼女たちと関わる、様々な分野で名を馳せる有名人や天才たち。
ところがそこに、幽霊となってまで家に戻ってきた父親ニックや彼の幽霊仲間たちが飛び入りし、妨害やら何やらで小さな街はカオスなことに。

──ひとつの家族から始まった、ちょっと奇妙な出会いのお話。