xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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>290 夏目央
随分生意気な事言う様になったわね――嫌いじゃないわ。(反抗とは珍しい、彼女の発言を受けて素直にそう感じた。良くも悪くも主張の控えめだった彼女の口からちくりと針で刺す様な、小さいながらも確かに伝わるほんの少しの反発を含んだ言葉に対して見せたのは、いつもの様に高飛車な態度でも素っ気無い態度でもない。くつりと喉の奥を鳴らす様な笑いと、すうと双眸を細める様な仕草。視線は前へと向けたまま、確認するまでもなく後を着いて来ている筈の彼女の姿は確認しないままに目的地へと向かう。屋内に居ると言うのに、この館で暮らしていると時折何処からかひゅうう、と生温い風が吹いてくる事がある。丁度今がまさにその瞬間だった。前方から吹いてくる風が肩へ流していた髪を攫って後ろへ流した頃、ゆっくりと僅かな躊躇いの気配を残したまま伸びてくる彼女の手がそこで待っていた。許可をするしないを扠置いて自然の力によって彼女の掌の中へするりと滑り込んだ薄紫色の髪の一束は、柔らかなその質感と波打つ様に緩やかな癖を伝えただろう。特別嫌がるでもなくかと言って喜ぶでもなく、顔だけでちらりと背後を振り返れば「猫か子供じゃあるまいし。」とだけ告げて溜息を吐く。そして、どうやらそうこうしている内に目的地にも辿り着いたらしい。ゆっくりと目の前の扉を開いた先にあったのは、この館で己が最も大切にしている一室。黄金の壁と天井、床。そして辺り一面に所狭しと置かれているのは、それこそトレジャーハンターがこぞって探し求めるような金銀、色取り取りの宝石の数々、それらを惜しみ無く使った宝飾品――見る者によっては激しく魅了され、また見る者によっては悪趣味だと顔を顰める、そんな何処かでも煌びやかな空間で)
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