xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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(玄関ホールに響く青年の笑い声、先程まで浮かべていた薄笑いよりは本物らしく、受け入れやすい。スラスラ零れる音の波は初めから用意されていた様に噛む事なく彼の口から滑り落ちる。胸の前で腕を組み、微動だにせず、黙したまま教えられた言葉の意味を読解していく。あの世でもこの世でもない、別次元と考えるべきか。艶々に磨かれ輝く相手の革靴の先へぼんやり視線を落とし乍、今後の身の振りを算段し始めた──その矢先、忽然と消えた青年。気配が立ち消えたかに思えた。不意に知覚した背後の気配、考えるよりも先に体が自然と動く。手はヒップホルスターへと伸び、振り向きざま、黒い塊を構えかけ。衝動のまま、撃ちそうになったのを引き留めたのは、何とも陽気な掛け声で。詰めていた息を吐き出し、何事も無かったように背後に這わせていた手を元の位置に戻しては、彼曰く異なる種族の相手に恐れる事もなく、利き手とは反対の手で悪戯を叱る様に伸ばした人差し指で相手の額を弾く真似をする。)
…ギャルソン、君の事は少なくとも最初よりはよく分かった。だが頼むから俺の背後には立たないでくれ、流石にニンゲンでなくても、痛みは感じるだろう?
(気さくな風を装って、軽口交じりに警告を告げるも、瞳に一瞬宿った殺気はホンモノ。此処まで自然に体が動いたのは、その生活が染み付いてしまったからか。嫌な事をまた一つ認識してしまった。両手で意味もなくスーツの裾をピンと伸ばしては、扉前から移動した彼を良い事に、ホール内へと足を踏み込む。広いホールは奥行きがあり、左右に其々奥へと伸びる通路が窺える。中庭から察した通り、塵の積もった床の上を我が物顔で進む。丁度ホール中央まで歩むと、一際目立つシャンデリアが。天井を見上げてみると、今にも落ちてきそうな廃れた有様に肩が落ちる。恐らく此処で過ごすしかないのだ、諦めにも似た溜息を吐き出せば背後の彼へ流し目送り。)
状況は理解した。つまり、何らかの理由で死にたがりの俺は此処に招かれた訳だが…その理由は?俺は此処で何をすればいい。
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