xxx 2017-12-05 23:46:58 |
通報 |
>173 夏目央
…私が興味に値するとは思えんが――此処が好きだと言うのなら、追い出しはすまいよ…寛いでゆくと良い…(文字通り、此処には到底数える事など出来そうもない膨大な数の本が収容されている。裏を返せば、それ以外には何もない場所なのだ。興味のある者には嘸かし充実した、それこそ夢の様な場所なのだろうが…特別探している本も無いのなら、静寂が確保されていると言う点くらいしか魅力が思いつかない。まして、自己卑下精神の強い性分であれば、己に興味を抱いて訪ねに来る者が居るなどとは想像もしていなかった。だからこそ、口から零れ落ちるのは愛想の無い捻くれた言葉だったが、彼女がこの部屋で過ごす時間そのものを妨害する意思は無いと言う事を伝える。世辞にも優しい男とは言えないが、冷え切った室内で女性が暖を取らずに過ごすには辛かろうと察してやる程度の事は出来るらしい。一体何処から呼び出して来たのか、蔵書室の奥からふわふわと漂う様にして運ばれて来たティーセットが彼女の前にあるテーブルの上へと並ぶ。まるで目に見えない誰かがその場に居るかの様な自然さで、ティーポットからは温かな紅茶が注がれ、ふっと立つ湯気からは微かなストロベリーの香りがするのを彼女は感じただろうか)
トピック検索 |