xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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>169 夏目央
――、(はた、と手を止めたのは不意に聞こえた少女の声に反応しての事。一体いつの間にこの部屋へ入って来たのか。その存在に全く気が付かなかったのは、普段とそう代わり映えをしない単調な作業にもそれなりの集中力を割いていた証拠である。"便利そうな体"、その一言を受けて鼻から短く吐息を漏らす様な素っ気ない笑いを零すと、声の主をゆっくりと振り返った。顔立ちは未だ微かなあどけなさを残す少女の其れでありながら、年齢にそぐわぬ妙な落ち着き――度胸とも、ある種の冷たさとも言える其れを孕むその姿を見た時、頭の隅にぷかりと浮かび上がる事がひとつ。つい先日の事だ、この館のとある住人から彼女についての話を聞いていたのである。その住人とは誰か、それは言うまでもないだろう。幾ら死にたがり相手とは言え、彼が人に世話を焼くのは聊か珍しい話。それだけに彼女の存在はある程度印象的に残っていた様で、すうと双眸を細めながら彼女の目線の高さまで下降すると「ヴィペールの話していた死にたがりは、お前の事だな…見ての通り、本を探しているのなら此処には掃いて捨てる程置いてある…好きに使うが良い。」と抑揚のない淡々とした声がそう告げて)
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