xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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>167 夏目央
蔵書室を気に入った死にたがりが居るのだと、風の噂に聞いていたが…
出入りは勝手にすると良い…騒ぎさえしなければ、私は構わん…
扉を開けて、明かりはつけておく…後は好きにしろ…
(すとん、すとん。天井の高い蔵書室には、分厚い本が棚へとしまわれてゆくその音がよく響く。日頃何かと騒がしいこの館において、恐らくは唯一、常に一定の静寂を保っているのがこの蔵書室。そんな空間で一日中、膨大な数の収容図書の整理に取り掛かっているのは半ば管理人と化した男――そう、今まさに、ふわふわと綿毛宛らに重みを感じさせぬまま宙を漂い、本棚から本棚へと行き来している己である。既にこの世のものではない肉体は、この世のものに触れる事が出来ない。その代わりに、所謂ポルターガイスト…手を触れずに物を動かす、念力の様なものを持ち合わせているのだ。この力こそ、蔵書室の管理役を任されている理由なのである。宙を漂う体の周辺には、大小様々な本が数冊それこそ風船の様にぷかぷかと浮いていた。時折ゆらりと手を動かしたかと思えば、糸でも引かれているかの様に動き出した本が戻るべき本棚へと導かれていく。それを何度も繰り返しながら、今日も今日とて終わりの見えない整理作業に勤しんでいて)
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