xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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>144 夏目央
(彼女は未だ年若い少女の筈、時折それがふっと感じられなくなる瞬間がある。否、若しくはその真逆なのかも知れない。危うささえ感じさせる素直さは、彼女が内に残したあどけなさ故なのか。何れにせよ、ある種の度胸を垣間見る瞬間がこれまでに何度か存在したが、今この瞬間もまさにその内のひとつとなるだろう。好奇心のままに動いた彼女、こんな得体の知れない場所ではいつ何が起こっても可笑しくは無いと言うのに、それどころかその結果こんな風に危ない目に遭っていると言うのに、その表情や言葉からは恐怖の色など微塵も感じられなかった。並みのニンゲンならばとっくに泣き出しているか、暴れているか、はたまた叫んでいるか――どの道、騒がしくしている事に変わりはないだろう。それなのに今目の前に居るこの少女は、平然として己を見詰めている。此処まで来るといっそ拍子抜けして、一瞬の怒りの感情も何処かへ吹っ飛んでしまったらしい。はあ……と重い溜息をついたかと思うと彼女の体を締め上げる半身の力を緩め、それでもまだ許してはいないと言わんばかり、長い爪を浅く食い込ませながら彼女の細い首を掴むと「どういう反応をするかは、これで分かったわね。もう二度と試してみようなんて思わないことよ、あと少し力を入れたら、アンタの全身の骨が砕けるわよ。」とおそらくは冗談ではない、本気の忠告を。しかしそれ以上には咎めもせず、怖がらせもせず、しゅるしゅると巻き付かせていた半身を解いてやりながら「それにしても…本当、妙に肝の据わった子ね。」と肩を竦め)
アンタ、随分夜更しじゃない。
生憎だけれど、今夜はそろそろ館の明かりを落とす頃合ね。
声は掛けたわ。さっさと部屋に戻ってベッドに入りな、暗くなってからじゃ部屋に辿り着けないわよ。
ちゃんと案内してやったんだから、迷わず真っ直ぐに行きなさい。良いわね。
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