xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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>138 夏目央
(此方がどんなに素っ気無く振舞っても、棘のある言葉を返しても、彼女は怯まず寧ろ彼女なりの前向きさで捉えようとする。健気ささえ感じさせるその姿勢に調子を狂わされてしまうのは、大凡己がその対極に在る存在だからなのだろう。それに心の何処かで気が付いているからこそ、それ以上の事は言わなかった。先の質問に対する彼女の答えについても同じ。僅かな声の震えに気が付いていなかった訳ではなかったのだ。それでも、仮に己が彼女の言った答えを"それは嘘だ"と否定したとて、きっと気丈に振る舞うのだろうとそう思っている。特別に確認をしないのはお互い様、無意識下にお互いが造り上げる目には見えない壁の存在がこうした何気ない会話の最中にちらついていた。とは言えそれは何も己と彼女に限った事ではない、更に言えば、知り合って日の浅い者同士であればよくある話。初めはこのくらいの方が丁度良いのだと、己の深い部分がそれを知っていた様だ。そうこうしている内に辿り着いたのは蔵書室の扉の前。「アンタが一日中、毎日読み漁ったってキリが無いくらいの本が置いてあるわ。」、そう言って開く扉の先には宛ら国立図書館とでも言うべきか、ドミノの様にずらりと並ぶ背の高い本棚にぎっしりと詰め込まれた本の数々。館の外観からは、こんなにも広いスペースが確保されているとは到底想像も出来ない。高い天井と奥行きのある室内には世界中の様々な国、そして様々な時代から集められた膨大な数の本が収容されているのである。この広過ぎると言って差し支えのない空間の中にぽつんと置かれているのは蔵書室を利用する者の為に用意された木製の机とテーブル。明らかにこの蔵書室の規模とは釣り合いが取れないその大きさが、この館に置けるこの部屋の利用状況を物語っていて)
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