赤の女王 2017-12-03 23:18:48 |
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洗い物くらいお安いご用さ。それと、気持ちいいなら性別なんて些細な問題だと思うぜ。(渡された上衣にさっと腕を通して羽織り、衿元を正しながら戯れを。背広の釦は止めることなく、袂を寛げたまま彼に向き直って。奪うことしか知らない指先で耳先に触れ、恐る恐る一撫で。作り物ではなく、血肉の通った温かな感触を指の腹で確めるように、優しく二撫で。柔らかい。生きている。室内を明々と照らす灯の下、爛々と暗色の双眸を輝かせ、興奮気味に早口で「bravo!すごいな!ふわふわだ!!」だなんて。幼子だってもう少し情緒的に喋れるだろうに、あまりにも実直で馬鹿正直な感想を嬉々と伝え。当人からの協力を得たことも後押しとなり、夢中になって手触りのよい獣耳を撫でたり摘まんだり好き放題に弄んでいたが、はたと我に返って動きを止め。一拍の間を置いて、ぶわりと腹の底から込み上げてくる羞恥心に数歩ばかり後退りながら、利き手の掌で顔を覆い。生きていく上で必要のない感情なんて当の昔に捨てたと思っていた。久しく感じることのなかったそれ。必死に取り繕う単語に纏まりはなく、ただ赤面した面だけは見せられまいとちっぽけなプライドに動かされるまま後退した体は、カウンターにぶつかってようやく止まり)───ッ、すっ、すまない!オレは、動物が好きなんだが、彼らにあまり好かれなくて…っ!だから、こうやってちゃんと触れたのは初めてで……年甲斐もなく、みっともないところ、を。
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