名無シ。 2017-12-02 21:44:10 |
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( / お褒めの言葉を頂き光栄な限りです…!畏まりました。では此方も下がらせて頂きます故背後様も何か有りましたらお呼び立て下さいませ。 )
( ちょっと、という言葉で片付けて仕舞えるような瑣末な問題ではない事は一目瞭然だった。強かな雨声の中でさえ鮮明に聴こえる呼吸は荒く乱れている。不意に掴まれた手首に縋る彼の掌は鮮血に塗れ、其れは事態が刻一刻を争う物だと警告のように示唆し。祈りに近い懇願は然と彼女に届き肯定しようとした矢先、網膜を刺激した深紅の双眸。人間に赤の虹彩を持つ者は稀有であり、早々存在しない。彼が世に蔓延る吸血鬼であるという一つの可能性が色濃く脳内を蹂躙する。恐怖がじわりと心を侵食していくが然し救済しなければ確実に彼は息絶える。恐怖と信念を天秤に掛け、刹那の逡巡の挙句に出した結論は──自由な隻手で弊害になるであろうウィンプルと襟掛けを器用に取り外しては碧眼に強い光を湛え、彼が何者で自分が何を為べきかを理解した上で了承し。 )
──…分かりました。私に出来ることであれば、お引き受け致します。
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