amt 2017-11-05 16:17:44 |
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【奇襲】
ザワザワと周りの木々が揺れる。
風に紛れて臭う焦げ臭さは、火炎瓶の炎が周りの木に燃え移っていることを知らせてくる。そうでなくとも、時折感じる熱が嫌でも教えてくれた。
──私は今、『潜んで』いる。『影渡り』の能力をフル稼働させて、影から影へと渡り歩いているのだ。……が、しかし。
いつまで経っても肌を刺すように纏わりついてくる視線が振り解けないでいた。
(くっ……影に入ってるはずなのに……!)
目の前に広がる影と光の世界。所々に差し込む光の筋を避けながら、なるべる暗い影の中を選んで移動する。上下こそあれ、地面は存在しない。重力のある無重力……あるいは滑空しているかのような、なんとも言えない感覚だ。
そんな影の世界から、出たり入ったりしながら様子を窺う。相手の姿こそ見えずとも、少し前からあからさまにその気配を醸し出しており、どうやらこちらを誘っているらしい。
「ぐぬぬ……!」
どうにもならない。いくら考えようとも、このお粗末な頭では作戦一つ浮かばない。みんなと合流しようにも、このまま正体不明の追跡者を連れたままでいるわけにもいかないし、かと言ってずっと影の中に留まるのも危ない。
極度の『能力』の使用は、私自身の存在に影響を及ぼすからだ。どこまで大丈夫なのかが分からない以上、神様頼みが精一杯でしかない。
「ぬう、ここは一か八か……走る!」
直接的な攻撃が来れば、ある程度の場所は分かるだろう。そんな稚拙な考えで表に出る。木陰に身を潜め、周囲を確認する。……と、丁度顔を出したその時、丁度見た方にある巨木がぐらりと傾いた。
「はえっ!?」
その巨木は、真っ直ぐこちらに向かって倒れてくる。
すかさず影に潜り込み、事なきを得るが、安心して息をつく間もなく倒れてきた巨木の根本を影伝いに目指す。
恐らく、そこにいるであろうケイを探して。
「──いた。」
予想通り、木の根元に身を潜めるケイを発見した。周囲に散らばる人形の四肢と、撒き散らされた黒い液体。更には直径ニメートルはあろうかという切り株を見るに、なかなかの無双っぷりを見せていたのだろう。
「ん。カナ」
「良かった。無事だったんだ」
「それはこっちのセリフ。」
「あはは……」
相変わらず纏わりつくような視線は離れないものの、何故か攻撃をしてこない。それどころか、敵意や殺気というもが薄くなったような気がする。
「…………。」
「カナ」
「大丈夫、なんでもない。」
「変な視線……?」
「……分かるんだ」
ケイはコクリと頷くと、キョロキョロとあちこちを見回す。
「……どこかは、分からない。」
やはり。もしかしたら、リニですら探すのは難しいかもしれない。
「──ふっふっふっ、そう簡単に見付かるわけないっしょ」
「っ!!」
「!」
咄嗟に小刀に手を伸ばすが、しかし、それよりも早く身体に衝撃が走る。
「かはっ……」
その瞬間で、私の意識は途絶えた。
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