秋雨

秋雨

amt  2017-11-05 16:17:44 
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牙を持った少女。
目を持った少女。
手を持った少年。
対するは、朱を纏った誰か。

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  • No.5 by amt  2017-11-17 02:44:10 

【光明】
 ──苦しい状況は、相変わらず続いている。
 ケイは周囲に出現する敵を近寄らせないよう、防衛に徹しているし、ナナキ博士は治療に専念している。私はその手伝いをしながらケイに敵の場所を知らせていた。カナとは、連絡がつかず、何度も通信機で呼び掛けているが応答はない。最悪のビジョンが幾度となく頭を過ぎるが、それを振り払って目の前に集中する。
「ティーナ、しっかりしろ!ダッツが命を懸けて助けたんだ!無駄にするつもりはないぞ!」
「博士!左右から来る!」
「だぁーこの畜生め!」
 ケイが対応しきれない分はこちらで何とかしなくてはならない。私は素早く銃を構える。マガジンには強化弾をセットしてあるから、しっかりと当てれば獣に大ダメージを与えられる。
 ナナキ博士も拳銃を構えようとするが、私はそれを例のプラズマカッターなるゲテモノに持ち替えるように言った。
「しかし、まだフルチャージまで時間が……」
「大丈夫、一発でいい。そっちに向かって縦に撃って!……来るよ!」
 素早く移動してくるものが三つ。それは獣で、私が見る方向に一匹、博士の方に二匹、それぞれ来る。そして私の読みは正しいはずだ。
「今!」
「ええい、ままよ!」
 合図と同時に、プラズマカッターが射出された。それは見事に獣の出鼻を挫いて、二匹並んだそいつらを同時に吹き飛ばす。
「よっしゃビンゴ!死になッ!」
 見事に目論見通りになったことを喜ぶ間もなく、今度は私の方に来た獣を撃ち殺した。強化弾を撃った反動は凄まじいが、私たちの身体能力にかかれば多少無茶が利く。
「……ん?今ので最後……出現エリアが狭まった?いや……移動してる?」
 ふと、周辺から敵がいなくなったのを感じ取る。あくまでも私の感知領域内ではあるが、それでも今までの猛攻のことを考えればすっかりもぬけの殻状態だ。
「ケイ、おい聞こえるか」
《……ん》
「私の分かる範囲の敵はいなくなった。だから」
《カナを探しに行く。お先に》
「え?あ、おい!……はぁ、まぁいいか」
 どうせ言おうとしていたことだし。
 通信機を、再びカナに繋げようと試みる。だが、相変わらず繋がらない。もしかしたらカナは、通信機が使えない範囲にまで出てしまったのかもしれない。あとは、別に通信機不可な領域にいるか。
「……まさかな。こんなに長くなんていられるわけ……」
 『とあること』を可能性として考えてみるが、難しいはずだ。そう、頭で理解してはいるが、しかし。
「……隠し事が下手なクセに、大事なことばっかり隠すのが上手いからな」
「『副作用』のことかな」
「ああ。……まさか、博士まで隠してるわけじゃねぇよな?」
「………。」
「……、……まさか、隠してたのかよ?」
 私は、目を見開いてナナキ博士に詰め寄る。博士は何も言わずにそっぽを向いた。

 『副作用』とは、私、カナ、ケイのような特殊な人間が持つ、特別な『能力』を使った際に発生する、自身への害悪のことだ。『能力』は個別に違っている。私の『能力』は『感知領域』。一定範囲の感知領域内において全てのモノの『感知』ができるというもの。そして『副作用』は、『昏睡』。一定以上『能力』を使って体力を消費すると昏睡状態に陥るというものだが、余程のことがない限り滅多に陥らないタイプだ。
 ケイの『能力』は、『自由変換』。いわゆる錬金術とかいうものの類で、触れた物を好きな物質、形状に変換することができるという、ほぼチートレベルの『能力』だ。しかし、『副作用』はなかなかにえげつない。『自由変換』の『副作用』は、『精神の希釈』。つまり、感情が薄くなっていくというものだ。しかも、『能力』を使っていない間も僅かながら常に進行し続けているらしい。
 そして、カナの『能力』。その名を『影渡り』と言う。文字通り影を渡る『能力』で、影の中へと直接潜り込むことができる。そこから別の影まで移動することができ、対象の影に干渉することで、本体に影響を及ぼすことも可能性だという。本人曰く、影の中に潜んでいる間はとても安らぐそう。だが、『副作用』のことを考えるとそんな呑気なことを言っている場合ではなくなる。『影渡り』の『副作用』は、『消滅』。これもまた文字通り、カナという存在が『消滅』してしまうというものだ。使ってすぐに消えるなんてことはなく、『能力』を使う度に、徐々にその存在が世界から消えていく。目に見えた影響こそないものの、ある時にふっと消えてしまう可能性があるという。
 私の『昏睡』はもちろん、ケイの『精神希釈』すら少しずつ回復するのだが、カナの『消滅』はそうはいかない。いわば生命を擦り減らしているも同然なのだ。
「……私の『感知領域』じゃ、概念的な『消滅』は感知できない……。かと言ってケイみたいにわかりやすくもない。なぁ、博士……。」
「……。」
「教えてくれよ。知ってるんだろ?あいつの状態のこと……!」
 いつの間にか胸ぐらを掴んでいた手に、更に力がこもる。もしかしたら、今、既にその存在が消えてしまったのかもしれない。そう考えるだけで焦燥に身を焼かれる思いになる。
「……彼女の影だ」
「え……?」
「『消滅』の影響は、影に現れる。気付きにくいと思うが、カナちゃんの影の輪郭がほんの僅かにぼやけている。全体的に形が崩れれば、その時は……。だが、まだだ。まだ猶予はある。それまでに解決すれば、あるいは」
「影……。」
 全く気付かなかった。というより、気にしたことなどない。まだ時間がある。そう聞いて安心したが、どちらにしろこのまま戦い続けることが危険であることに変わりはない。
「……ここを離れるわけにはいかない。でも、カナが心配だ……。」
「そうだね。どうしたものか……。」
 二人で頭を抱える。と、その時──
「──なら、アタシに任せておくれよ」
「ッ!? 」
 ──感知できない何者かが、瓦礫の上から私たちを見下ろしていた。

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