春兎 2017-04-16 23:22:19 |
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触れたい。
骨ばった白い指に、柔らかい黒の髪に、鍛えられた腹部に、滑らかな背中に。
そう思って携帯電話を握りしめるけれど、そこから先の行動を起こす権利は俺には無い。
部屋に響く秒針は耳に刺さるようで、睨みつけるようにそれを見れば夜中の2時を指していた。
起きているだろうか。撮影とか、収録とか、曲作りの最中とか――。
そうして思考を巡らせていると、それまで額を伝っていた汗と手の震えがいつの間にか止んでいることに気が付いた。
彼奴のことを考えているだけで落ち着くなんて、我ながらとんだ末期症状だと思う。
声が、聴きたい。
さっきまでの欲にまみれた感情とは違う、素直な気持ちがあふれると同時に、手の中の携帯電話が震えだした。
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