迷子な主人公さん 2017-03-26 19:17:44 |
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(/ 了解しました!また用があったら私も顔を出しますので。改めましてこれからよろしくお願いします! )
…帰れないの。来た時は、この路地の先から来たはずなのに。
(不気味に感じるほど静かな空間にひとつ羽の羽ばたきを耳にして。こんな世界にも鳥は存在しているのかとぼんやりとした目で見上げれば隣の家の屋根から自分を見下ろす姿。目を凝らせば先程の場所で唯一自分に声をかけた男だと理解して。突然意味のわからないところに放り出されて聊か気持ちが混乱しているのか、自嘲気味な笑みを浮かべてぺたりと冷たい壁に手のひらを合わせてぽつりと質問に答えるように呟きを零して。同時に蘇るのは今までそばにあったはずの生活。親があまり顔を合わせることはなかったが、それでも幸せを感じていた生活。それが何の前触れもなく奪われてしまった。その事実に目尻が再び熱くなり、今度こそ抑えが効かずに雫が頬を滑り落ちる。辛くて辛くて堪らない、けれどせめて弱音は吐かずに行こうと僅かに残った強い意思で唇をきゅ、と引き締めて。頬に伝う涙を手の甲で拭えばその手で地面に手をついて立ち上がって深呼吸を一つして。そうすることでなんとか落ち着けたような気を感じた。ここで泣きじゃくっている場合ではなく、帰る道を探すのが第一だと冷静になった頭で考えて、地面を見つめ数分思案する素振りを見せたあと勢いよく上空を仰ぐ。目線の先には先ほどの男。――帰るためにはこの世界の情報がいるし、それまで住む場所も必要。でもわけもわからぬ世界で誰かを頼るなんて無謀な真似はできない。が、あの時、自分に声をかけてくれた彼のことは信用してもいいと理由もなしに思い。すっ、と息を胸いっぱいに吸い込んで「――あの!私、来宮桜って言います!…家事でも何でもしますから、私が帰る日まで貴方の家に住まわせてもらえませんか!」屋根の上にいる相手へ届くように声を張り上げて、その瞳でじっと見つめ。)
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